『サガ エメラルド ビヨンド』レビュー。毎回戦況の変わる戦略バトル&周回するたびに変わるストーリー。『サガ』最新作は無限に遊べそうな“真の周回プレイ”ゲームだ!

by西川くん

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『サガ エメラルド ビヨンド』レビュー。毎回戦況の変わる戦略バトル&周回するたびに変わるストーリー。『サガ』最新作は無限に遊べそうな“真の周回プレイ”ゲームだ!
 RPGファンの方々は『サガ』シリーズと聞いて、何を連想するだろうか。

 モンスターの肉、アイスソード、アリなどタイトルごとの要素だろうか。技をひらめく豆電球や陣形などのシステムや、個性的な名前になっている技・術の数々を思い浮かべる人もいるだろう。

 筆者は『サガ』シリーズと言えば、“どれもゲーム性が違う”ことを連想する。

 RPGであることや、一部ある程度共通のポイントはあるものの、どのタイトルもゲームシステムが大きく異なり、その強烈な独自性こそが“『サガ』らしさ”につながっていると思う。

 『サガ エメラルド ビヨンド』も同じく、強烈な独自性・ゲーム性を持つ『サガ』である。はっきり言って、クセが強すぎて発売後は賛否両論があってもおかしくないようなゲームだ。しかし、筆者は夢中でのめり込んだ。
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 本記事では、2024年4月25日にスクウェア・エニックスより発売される
『サガ エメラルド ビヨンド』のレビューをお届け。筆者は全主人公で一度クリアーしているほか、一部の主人公は周回クリアーも達成済み。

 物語のネタバレは基本していないが、本作は“周回プレイ前提”の作りになっており、そこが大きな魅力にもなっているため、ほんの少しだけ周回要素のポイントもご紹介。些細なネタバレも気になる人はご注意を。

 より詳細なシステム解説は下記の先行レビューでお届けしているので、詳しく知りたい人はぜひこちらもチェックしてほしい。

『サガ エメラルド ビヨンド』(Switch)の購入はこちら (Amazon.co.jp)『サガ エメラルド ビヨンド』(PS5)の購入はこちら (Amazon.co.jp)『サガ エメラルド ビヨンド』(PS4)の購入はこちら (Amazon.co.jp)

毎回何かが“変化”するRPG

『サガ』シリーズ20作目となる『サガ エメラルド ビヨンド』は、Nintendo Switch、プレイステーション5、プレイステーション4、PC(Steam)、iOS、Androidにて発売。家庭用ゲーム機向け作品としては珍しく、スマートフォン版も他ハードと同タイミングでリリースされるので、ゲーム専用ハードを持っていない人でも遊びやすい(意外と知られていない!)。

 ディレクターは
『サガ』シリーズの生みの親である河津秋敏氏が担当。ファンからは“河津神”の愛称で呼ばれることも少なくない同氏のエッセンスが、本作にもバリバリに含まれており、往年のファンならば随所から「あぁ、河津神のゲームだ」と感じられるはずだ。

 最初にお伝えしておくと、本作はいろいろな部分で“難しい”。まず、遊び始めるハードルが高いように思う。パッと見、ビジュアルは各段に美麗なグラフィック、とは言い難いし、ド派手な画面があるわけでもない。

 キャラクターも人間からロボット、ヘンテコなモンスターまで混在していて、過去に
『サガ』シリーズを遊んでおらず、本作を初めて見たという人は「なんじゃこりゃ」と思うかもしれない。
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 また、バトル難度がとても高い。1戦闘ごとに手が抜けず、プレイヤーの戦略が試されるため、システムをキッチリ理解して立ち回らないと、勝てない戦闘も多々出てくるだろう。それでいて、丁寧なチュートリアルがあるわけではなく、超基本的なこと以外教えてくれない。

 そういった面でプレイヤーを少し突き放しているものの、遊び込んでいくうちに、“楽しませる”といった部分ではサービス精神に溢れたゲームであることがわかってくる。

 本作は17の世界を旅していくのだが、主人公に選んだキャラクターやプレイ回数によって訪れる世界が変わるため、あまり行く機会がない世界も出てくるはず。それでいて、世界ごとに展開が複数用意されているほか、その世界固有のシステムが存在する場合も。周回プレイ時、前と同じ主人公で同じ世界を訪れたとしても、また物語が違ったりする。
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 本作をプレイし、まず一度クリアーした人は、「んん? これでよかったのか?」、「あのときこうだったけど、ほかの道もあった?」と、何かしらの疑問を感じたまま終わるはず。そして、周回プレイを重ねていくうちに、少しずつ本作のことを掴み始めていくだろう。

 バトルの展開は毎回違うし、毎度手が抜けないので新鮮で飽きがこない。そして物語も、毎回異なる展開を見せる。すべての要素で、毎回“変化”することこそが、
『サガ エメラルド ビヨンド』最大の魅力だろう。逆に言えば「同じ展開を追う」ほうがむしろ難しい。それくらい、多岐にわたる変化を楽しめるタイトルなのだ。
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個性的すぎる17のワールド


 プレイヤーは6人5組の主人公の中から、いずれかを選んでゲームをスタートする。主人公たちそれぞれに目的はありつつも、17の世界(ワールド)を旅していく部分は基本共通している。すべてのワールドを1周で回ることはなく、いくつかの世界をクリアーすると、それぞれのラストの展開に突入する。

 世界観は
『サガ フロンティア』の“リージョン”に近く、非常にバラエティ豊か。中世ファンタジー風の世界もあれば魔法世界、SFメカ世界、現代の日本的な土地などもある。一部の世界は主人公のメインストーリーに絡んでいるため強制的に向かうことになるが、基本的に、どの世界を旅するのかはプレイヤーに委ねられている。

 各ワールドに、みっちり楽しめる濃密な体験が用意されている。ただ、ときどき冒険を途中で打ち切ることができ、「主人公が目的を達成した」、「主人公の目的と本当に関係ない世界だった」、「選択肢でそのワールドに関わらないことにした」といった理由で、超短時間でその世界での冒険が終わることもある。このあたりの自由さは、やはり
『サガ』といったところ。

 どのワールドに行くかを選ぶのは簡単。“連接領域”という3Dフィールドで、扉を開くだけ。どのワールドへの扉が表示されるかについては、法則があるのか、ランダムなのかよくわからないが、周回ごとに異なる道筋をたどることになる。
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 ワールドごとに決まった遊びやシステムが盛り込まれている場合があり、たとえば自然豊かな動物たちのワールドは戦闘がほぼなく、謎解きアドベンチャーのようなシステムに。海賊の世界では船を乗り継いでのマップ探索。中世ファンタジー世界では陣地を取り合う争いなどもあった。

 それぞれのワールドで、異なる世界観が楽しめるだけでなく、独自の遊びもたっぷり。それでいて、展開が毎回違うのがやはり驚いた。導入を見て「あ、これ前の周回で体験したな」と思いきや、進めていくと中身がぜんぜん違ったりするということもあるのだ。

 「前と同じ道を選びつつ、最後のほうだけ別の選択にしてみよう」と思ったら、前に選んだ選択肢が消えていたことさえあった。もう前回と同じプレイは、たどれないようにしてあったのである。それくらい、周回プレイ前提に作られている。
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海賊ワールド。シンプルなファンタジー世界かと思いきや、現代の軍艦が登場することもあったりと、なかなかにワイルドな世界。


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人間の体内のようなワールド。見た目はユニークだが、物語はマジメ。


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路面電車やクルマで移動する近代的なワールド。


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路電や馬車を使ってどのスポットを訪れるかでスコアが算出される、ボードゲーム的なワールドだ。

 なお、「RPGといえばダンジョン探索の遊びだ」と考える人もいるとは思うが、本作にはほぼない。緑、青、赤の線で表示される“エメラルドウェーブ”に従って、イベント場所まで向かえばいいだけなので、迷うことはあまりないだろう。

 RPGファンからしてみると「ゲーム側から提示された場所に向かってるだけじゃないか」と思われるかもしれないが、このエメラルドウェーブが妙にクセになるというか、実際あると、とても便利。

 劇中の選択肢が豊富で頭を悩ませてくるし、バトルも難しくて頭を使う。これでフィールド探索まで付いていたら、オールタイム頭脳フル回転で遊ぶゲームになってしまっただろう。
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アドベンチャーゲームのような動物ワールド。


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三角がすべてを握るワールド。陣地取りのような遊びが楽しめる。

 探索は“ほぼ”ないと言ったのは、一部世界には探索要素があるから。地面を掘って道筋を見つけていくモグラの世界や、流砂がギミックになっているスチームパンク世界などでは、少しだけ迷うこともあるだろう。そこはワールドの個性だと思ったので、気になることはなかった(というか、世界や物語に関して、それ以上に気になる点が多すぎるからだと思うが)。ちなみに、エメラルドウェーブでは表示されないイベントもいくつかある。

 なんだか複雑そうに見えるかもしれないが、遊んでみるとシンプル。目の前で起こったことを飲み込めばいいだけなので、ただただ自分の道を選択していけばいい。戦闘は敗北したら基本的にはゲームオーバーなのだが、シーンによっては敗北しても続く場合もある。セーブ&ロード機能は当然あるので自分の好きなように遊んでいいとは思うが、筆者としては流れに身を任せて遊んでみるのがオススメだ。やれなかったことは、つぎの周回で狙ってみよう。
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やみつきになるタイムラインバトル

 物語は本作の軸のひとつではあるが、プレイ時間の大半をつぎこむことになるバトルが本作のもう1本の柱だ。これがもう、とにかく楽しい。各ワールドでは、超強引な展開でバトルが始まったり、とりあえず戦ってから出来事について考えたりするシーンも多いが、そんなことがどうでもよくなるぐらいに超楽しい。

 一般的なRPGのバトルは、育成さえすれば乗り越えられたり、ボス戦以外の敵はサクサク倒せたりと、ある程度“流し”で戦える場面があるはずだ。本作には、それがほとんどない。いわゆる通常攻撃を連打すれば勝てるようなシーンがないのだ。

 敵と戦う前に難易度が表示されるが、“楽勝”以外の敵は、総じてボス戦級にしっかり戦略が必要。何なら“楽勝”でも、敵の構成次第では、仲間が育っていようがピンチになる可能性だってある。それくらいに骨太で、そしておもしろい。

 ターンごとの味方・敵の行動順が戦闘を左右するシステムはほかのタイトルにもあるが、本作のバトルは、好評だった
『サガ スカーレット グレイス』のバトルをベースに、『サガ エメラルド ビヨンド』ならではのシステムに進化しており、これがもうやみつきになること間違いナシ。
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 戦略の考えかたは、ある程度はシンプルで、とにかく技・術のラインをつなげる“連携”を目指せば有利に戦える。うまく連携が決まって、さらに追加行動の“オーバードライブ”が発動したときの気持ちよさなど、独特の爽快感と興奮が味わえる。

 さらに、仲間ひとりで連携する“独壇場”がバトルを盛り上げてくれる。うまく発動すれば、パーティー全員の行動を足しても足りないくらいの火力を出し、まさに“独壇場”の活躍をしてくれて、とても気持ちいい。高難度ボスは、独壇場ありきのようなバランスの場合もある。
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 そして連携やオーバードライブ、独壇場は、敵が使用してくる点もバトルを盛り上げてくれる。「気軽に連携を許したがためにオーバードライブを発動されてピンチ」、「うっかり独壇場を許したがために全滅」など、敵に使わせると超手痛い目を見るだろう。

 技の選択ミスでうっかり自分の連携を崩してしまうなど、さまざまな局面を経験して学習していけば、次第にピンチも少なくなるはず。しかし、「偶然新たな技を“ひらめき”で習得して相手を倒してしまったせいで、敵の独壇場を発生させてしまう」など、ランダム要素でピンチになることも多い。

 ある意味理不尽ではあるのだが、それがまたドラマティックな展開を生みやすく、プレイヤーに希望も絶望も、または笑いも与えてくれる。こういった部分もアクセントとなり、戦闘に飽きが来ないのだ。
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 毎ターン提示されるシチュエーションに合わせて、最適なコマンドを選ぶために毎度も悩むため、プレイ時間のほとんどは戦闘に割かれていくのだ。これが面倒にならないくらい、何度も言うように楽しい。もちろん人によっては、「戦闘頻度が高くて面倒」、「強敵とだけ戦っていたい」と感じる場面もあるかも。難度“楽勝”の敵と戦うほうが辛いRPGもなかなかない。

 ただ、欠点を言うと、あまりにもゲーム内での説明が乏しい。これまでの
『サガ』シリーズよりもそれなりに充実はしていて、一応“Tips”を見ればシステムが書かれているが、とても膨大かつ、具体的な説明がない要素も多く、理解するのはかなりたいへんだろう。シリーズ作、とくに『サガ スカーレット グレイス』に慣れている人ならばそれなりにわかると思うが、初心者にはだいぶ苦労するはず。

 一応公式でバトル解説動画が公開されたりはしているが、このあたりはもう少しゲーム内で説明したほうが、多くの人にとって遊びやすかっただろうと感じた(が、「いやこれこそ
『サガ』シリーズだよ!」と、逆に賞賛気味に喜んでいる別の自分もいます)。

 理解すればとてもとても楽しいが、慣れてもずっとコマンドをタイムラインとにらめっこしながら戦うことになる。つねに考えて戦っていく必要があるがゆえに、長時間遊ぶと脳が疲れるのが難点というか、うれしい悲鳴。休み休み遊ぶのがオススメ。
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周回プレイについて

 “周回プレイが楽しめるゲーム”なんて、まあよく聞く話なのだが、説明を受けるだけでは理解しにくく、そして遊ばないと、本作の言う“周回プレイ”の意味が伝わりにくいだろう。同じような展開も一部あるものの、遊ぶたびにシナリオが変わるゲームだと思っていい。

 一般的なゲームで言う周回プレイとは違い、本作は2周目以降じゃないと見られない要素がたくさんあり、何度もくり返して遊ぶゲームになっている。

 ほとんどの要素は引継ぎ可能で、アイテム・成長具合もほかの主人公で遊んだ場合も引き継げる。ゲーム内におけるプレイヤーレベルのような“バトルランク”を引き継げば、初めて遊ぶ主人公でもステータスが強化された状態で遊べるため、イチから育てなくていいのはうれしいところ。
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 ただし、種族がメカの主人公“ディーヴァ ナンバー5”は、シナリオの都合上、バトルランクを引き継いでも、ゲーム序盤ではあまり強化できないのが難点で、主人公だけ弱い状態で遊ぶことになる。1周目は仕方ないが、2周目以降はどうにかしてあげてほしかった。

 とはいえ、デフォルトではバトルランク引継ぎの設定がオフになっているので、どう遊ぶのかはプレイヤー次第。アイテム引継ぎオン、かつバトルランク引継ぎオフならば、かなり余裕のある戦いができるので、そこはお好みで。筆者は全部ランク引継ぎオンにして遊んでいたので、主人公を変えるたびにずっとずっと骨太なバトルが味わえた。

 また、アイテムだけは引き継ぎたくない、といった人も個別にオン・オフが可能だ。自分好みの設定で、周回プレイを楽しもう。
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メカは装備でステータスが決まるが、ディーヴァ ナンバー5は物語の都合で、初期は装備欄が閉じられている。バトルランクを引き継いで始めると、初期は活躍しにくい。


主人公の印象

 各主人公を最後まで遊んでみた1周目の感想をメインに、2周目以降についてや、シナリオの長さをご紹介。本作はどの主人公から遊んでも楽しめるが、もし誰にするか悩んでいる人がいたら、主人公選びの参考にしてほしい。物語の具体的な内容には触れないが、2周目の内容に一部言及することがあるので、ネタバレが気になる人はご注意を。

 なお、筆者は下記の主人公を、上から順番に攻略していった。もしかしたら、攻略順によってプレイ時間や体験が異なるかもしれない点はご勘弁を。
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クグツ使い 御堂 綱紀

 人形のような種族“クグツ”を操る力を持つ“御堂家”の一員、御堂 綱紀。任務のため、ほかの世界で精霊を集めることになる。本作の王道主人公といったところで、物語や展開はいかにも主人公らしい。1周も比較的短時間で終わる(とくに1周目は)ので、サクっと遊びたい人や、本作を初めて遊ぶ人にオススメしたい。

 “クグツ”の性能を一部変更できる能力を持ち、初期パーティーメンバーは綱紀以外がすべてクグツ。クグツは扱いが少し難しいので、そのあたりが初心者向けではない部分があるが、一周目をプレイする段階では、とくに難しいことは考えずにバトルに臨めるチュートリアル的主人公だ。
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 1周目ではなんとなくの結末を迎え、2周目以降は、物語の展開もガラリと変化。周回プレイにおける変化を感じられやすいのも、本作の入門に向いている部分だ。
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周回すると、1周目と違うセリフを目にすることが多い。

ネコを集める魔女 アメイヤ

 魔女のワールドであるプールクーラから、卒業試験のためにミヤコ市にやってきた魔女、アメイヤ。物語の序盤で魔力を失ってしまい、魔力を取り戻すために各ワールドを冒険していく。ワールドに散りばめられた“ネコ”を集めると魔力が戻るほか、能力が強化される。

 いわゆる“変身魔女っ娘”シナリオで、彼女のメインストーリーでは、明るくポップな物語が描かれていく。アメイヤのシナリオも、比較的短時間で終えることができる。うまく物語を進められるかはプレイヤーの選択次第といったところで、展開の変化も多く、周回プレイならではの楽しさを短時間の中でも味わえる。
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 アメイヤは術に長けた性能なので、術を使いこなすとグッと楽にバトルをこなせるだろう。ただし、本作の術はそれなりにクセがあるため、どう運用していくのか考えたいところ。なお、初期メンバーのひとり・ロロはモンスターなので、プレイすることでモンスターについて学べる。
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旅する吸血鬼 シウグナス

 闇の王であり、吸血鬼のシウグナスは、あるとき何者かに襲われてしまう。そして目を覚ますと、紛争の絶えない中世ファンタジーなワールドにいた。シウグナスは玉座を奪還するために、ほかのワールドで力を取り戻しながら、旅を謳歌していく。

 いわゆる“中二病”の化身のような言動をするが、じつのところは仲間思いで、カリスマ性のあるシウグナス。闇の王として振る舞いカッコつけているものの、各ワールドでの旅を楽しんでいる姿が、見ていて微笑ましかった。
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 シウグナス編では、中世ファンタジー風のワールドで出会うキャラクターたちが初期メンバーとなるが、彼らは基本的に記憶を失っている。仲間たちの過去を各ワールドで知っていき、絆を深めていくような物語がつづられる(仲間の過去を深く追わないこともできる)。
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仲間のひとりである“人斬”のルーツをたどりに、ミヤコ市へ。人を斬りたい仲間&吸血鬼と、女子高生がトーク!

 シウグナスは、指定したヒト系の仲間を“眷属”に任命することができる(※なお、初期メンバーたちは、関わっているワールドに行って条件を満たさないと眷属に任命できない)。眷属にすると、シウグナスの最大LPが増加し、シウグナスが特別な技“ブラッド技”を使えるように。

 メインストーリーだけでも6つのワールドの攻略が必須なこともあり、1周の時間はそれなりに長め(だいたい10時間前後)。各ワールドの固有シナリオと紐づきつつ、仲間たちの過去も語られていく独特の展開が見どころだった。
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眷属のキャラクターに“ブラッドギア”という装備を付与すると“騎士”となり、ブラッド技を使用できるようになる。

心を失ったメカ ディーヴァ ナンバー5

 “歌姫”として親しまれる、歌とダンスが得意なメカ、ディーヴァ ナンバー5(以下、D5)。あるときD5は禁止された歌を披露してしまい、それが原因でメモリ(心)を封印され、歌唱機能も使えなくなってしまう。心もボディも捨てたD5は、マネージャーのコンスタンティンに誘われ、心を取り戻すために各ワールドを冒険していく。
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D5の歌姫ボディ。

 D5は、冒険初期はレトロなメカボディだが、ほかのメカを仲間にすると、そのメカのボディタイプに変更できる能力を持つ。レトロボディはモニターで表情を表すのがカワイイ。ほかのボディは戦車型やヴァンツァーみたいなものまで登場するが、それでも中身はD5ゆえに、言動や仕草がカワイイのが魅力的。
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ゲーム開始時のレトロボディ。これはこれでカワイイ。
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ヴァンツァーと言ったが、イメージはもうモ〇ルスーツなボディも。
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フィールドでも超巨大ボディを操作できる。

 メカ種族は装備欄をすべて装備アイテムで埋められるのが特徴だが、D5は序盤は装備欄が閉じられていて、メカの仲間を加えるたびに装備欄が1個解放されていく。そのため、どうしても物語の初期から活躍させることが難しい性能になっている。代わりといってはなんだが、装備欄が解放されたラスト付近の展開では本作屈指のシチュエーションが楽しめるので、ぜひお楽しみに。

 なおD5編は、初期メンバーにメカ、モンスター、短命種、魔具使いがいるため、特殊な育成や立ち回りを楽しめる。

 メインストーリーを進めるには、メカを仲間にできる世界をクリアーする必要がある。シウグナスと同程度に、そこそこクリアーまで時間が掛かった。

警官コンビ・ボーニー&フォルミナ

 大統領の暗殺未遂事件を捜査していた警官のボーニーとフォルミナは、ひょんなことからバディを組むことに。謎の男と、謎の三角形を手掛かりに、ワールド各地と拠点を行き来しながら事件を追っていく。

 あらゆるワールドで捜査ができ、いちばん自由度が高い。そのためか、筆者のプレイにおいては、全主人公中いちばんプレイ時間が長かった。と言っても、引継ぎにつぐ引継ぎで、戦闘時間が圧倒的に長かっただけかも?
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 なお、ボーニー&フォルミナは、物語の展開によって、フィールドで操作するメインキャラクターがボーニーかフォルミナのどちらかになる。このとき選ばれた側がシナリオを進める中心人物となるため、メイン側はパーティーから外せない性質を持つ(選ばれなかった側は、サポートメンバーにするならば、バトルから外すことができる)。とはいえ、どちらが選ばれるのかわからないならば、どちらも育成しないといけないので、基本的にふたりともバトルで活躍させていた。

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メインキャラクター変更要素はいまいち魅力がわからなかったが、周回を重ねればわかる部分もありそうだ。

新たな『サガ』の挑戦

 1主人公、早くて5時間くらい、長くて10時間前後でクリアーできるため、1周のボリュームが少ないと言えば、少ない。だが、“全クリ”となると、何をもってして“全クリ”と言えるのかわからないのが本作だ。

 筆者は全主人公クリアーしたものの、振り返るとシナリオで納得のいっていない部分も多く、各主人公の2周目をスタートさせて「ああ、なるほど」と思ったものもあれば、さらに謎が深まったりするものもあった。そういった意味でも、ボリュームは膨大で、とても奥深い。

 とてもおもしろいゲームであることは間違いないのだが、お世辞にも「ゲーム初心者にも遊びやすい」とは言えないし、「誰にでも楽しめるゲーム」と言えば、きっと嘘になるだろう。かなりゲーム慣れした人向けの作品かつ、世界観も特殊だ。

 ただ、ハマる人には間違いなくハマる。“賛否はあるが好きなところはすごく好き”といった
『サガ』シリーズらしい作品であることも、間違いない。チャレンジングなゲームをつねに送り出してきた『サガ』シリーズの新たな挑戦状が、『サガ エメラルド ビヨンド』なのだ。

 iOS/Android以外のハードでは体験版も配信されているので、気になる人はまず体験版を遊べば、きっとバトルの楽しさはわかってもらえるはず。物語をくり返し遊ぶ楽しさは、ぜひ本編で。翠の導きに身を委ねながら、新たな
『サガ』体験を楽しんでみてほしい。

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