骨太中世ストラテジー『マナー・ロード』レビュー。貧乏領主が成り上がるために民衆たちを監視する。難易度ノーマルでも歯ごたえあり!【Manor Lords】

byなんでもゆうこ

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骨太中世ストラテジー『マナー・ロード』レビュー。貧乏領主が成り上がるために民衆たちを監視する。難易度ノーマルでも歯ごたえあり!【Manor Lords】
 突然だが、中世ヨーロッパと聞いてどういうイメージを持つだろうか?

 私の場合は、封建社会、家畜小屋のある民家、麦が生い茂る田園風景……というところが思い浮かぶ。人々は飢えや天災、くり返される戦争といった困難に立ち向かいながら、領主の支配下でたくましく生き抜いていたことだろう。

 そんな中世の暮らしぶりをゲームで表現したのが、今回取り上げる『マナー・ロード』だ。早期アクセス版が本日(2024年4月26日)リリース予定の本作は、先日Steamのウィッシュリスト登録数が300万件を突破しており、いまもっとも注目されているストラテジーゲームのひとつと言っても過言ではない。

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 開発を手掛けるのはポーランドの個人ゲームスタジオであるSlavic Magic。14世紀の中世ヨーロッパの生活にインスピレーションを受けたことが本作の成り立ちで、じつに7年の月日をかけて丁寧に開発されてきたという。

 多くのストラテジーゲームと同様に街づくりと戦闘の両方を軸に据えた作品ではあるが、『マナー・ロード』はその中でも、ユニットの生活区画に重きを置いているのが特徴だ。

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 本作では生活区画の建築時に、エリアの広さや形を自在に変えることが可能。ふたつの家族が居住できる大きな母屋や、菜園や醸造所、各作業場などに拡張できる裏庭を設置できるのだ。

 中世ヨーロッパという魅力的な舞台と、生産と街の発展が密接に関わる独自のシステム。領主として自分だけの街づくりを追求できる本作に、多くのユーザーが惹きつけられている。

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ストラテジーゲーム好きライター、初回プレイで洗礼を受ける


 かく言う私も、自由な街づくりに期待してプレイを開始したひとり。ゲームを起動させると“繁栄の始まり”、“平和の修復”、“一触即発”という勝利条件が異なる3種類のシナリオが表示され、それぞれイージー、ノーマル、ハードの難易度でスタートできるようになっている。趣味でストラテジーゲームをすることもあって、私はシナリオ“平和の修復”かつ難易度ノーマルでの初プレイを試みた。この選択が悲劇を生むとも知らずに……。

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 本作では初めに5家族(ユニット)の入植者を迎え入れ、彼らに生活区画を建造して住まわせて、生き延びるための食料と燃料を確保していくこととなる。採掘場、農場、交易所なども設置できるが、開始時は5ユニットのみで初期資源も少ないため、街の中心を決めたら市場を設置し、その周囲に生活区画を建てていくといいだろう。

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 また、生活区画、燃料、食料などがともなって初めて、“好感度”(いわゆる幸福度)(※)の数値が上がるシステムになっている点にも言及しておこう。資格が50%以上かつ生活区画に空きがある場合にのみ人口が増加するため、労働力不足を補うべく生活区画を優先して建てていきたい。

※本作の日本語訳の精度については今後改善される予定とのこと。

 さらに、最序盤で気をつけたいのが雨や雷などの天候イベント。初期資源など野ざらしのものは、雨が2回降ると痛んで使えなくなる可能性がある。物資が濡れるのを防ぎたいなら、早期に倉庫と食料庫を設置しておくといい。

 最序盤におすすめする建築物をまとめると、少なくとも市場と5つの生活区画、食料用に狩人の野営地もしくは採取者の小屋、建材&燃料用に伐採場と木こりの小屋、そして倉庫と食料庫となる。マップに点在する盗賊が資源を盗んでいくこともあるが、彼らにはとりあえず目をつぶり、ひとまず生活を安定させるのが発展への近道と言える。

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 なお、簡単なチュートリアルは示されるものの、今回は早期アクセス前の先行プレイということもあってほぼ手探りで攻略したため、上記のコツに至るまでに2回も街を放棄する憂き目に遭っている。もし初回プレイ時に私と同じく“平和の修復”かつ難易度ノーマルを選ぶ場合は、天候イベントと開始時の盗賊の野営地を“なし”にしてスタートするのがおすすめだ。

 さらに言うと、ちょうど各要素を理解したころにやって来る凶悪な略奪者に街を丸ごと燃やされないたくないなら、最大2年に一度訪れる略奪者の出現頻度も“なし”にするといい。


居留地レベルを上げて街の発展させよう

 キャンプ生活からスタートした小さな集落の生活も人口が増え、少しずつ軌道に乗ってきた。だが、すぐにつぎの試練が訪れる。木の葉が落ち、雪がちらつく季節。そう冬だ。冬になると各ユニットは寒さをしのぐために2倍の燃料を消費する。さらに、暖かい季節の安定した食料源であるベリーが採れなくなるのだ。ユニットの餓死や凍死を避けるためにも、冬になる前に食料と燃料は十分に蓄えておきたい。

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 長い冬を生き延びたら、いよいよ街を発展させていく段階だ。とは言え、資源と資金を使って思うままに建築しても、人は増えるが街自体は成長しない。

 発展の指針となるのは、設定された“居留地レベル”だ。居留地レベルは“入植者キャンプ”から始まり、“小さな集落”、“集落”、“大きな集落”という具合に発展に伴って名称が変化していく。レベルアップ時には“開発”で使用する開発ポイントが手に入り、これによって農場で牛を使役できるようになったり、養蜂場を建てられたり、ヘルメットを製作できるようになったりする。つまり、開発ポイントで街をプレイヤー好みに特化させられるわけだ。

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 では、具体的に居留地レベルを上げるにはどうすればいいか。それには各ユニットが暮らす生活区画のレベルアップが必須となる。レベルアップの条件は以下の通りだ。

  • レベル2へのアップ:生活区画(レベル1以上)を5つ建築する
  • レベル3へのアップ:生活区画(レベル1以上)を5つ以上、かつ生活区画(レベル2以上)を2つ建築する

 生活区画については、もっとも難易度が低い生活区画レベル2へのレベルアップ条件だと、生活区画の近くに井戸を配置する、木造教会を建造する、市場の燃料露店から供給させる、食糧露店から少なくとも2種類供給させる、衣類露店から供給させる、といった内容だ。

 ちなみに、市場の露店に並ぶ商品は、ものによっては生産ラインを経て完成さなければならない。パンの流通ひとつ取っても、小麦を収穫し、風車で粉をひき、共有オーブンで焼くという工程が発生する。パンに限らず、衣服や酒類、装備品といった各製品には、材料の調達とは別に異なる生産ラインでの加工が不可欠だ。

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 生活区画レベル2へ移行するのであれば食料はベリーと肉でこと足りるため加工は不要だが、衣類として露店に並べるには動物から手に入れた皮をなめして革にする必要がある。

 これがレベル3となると条件がさらにきびしくなり、食料や衣服の種類を増やすことが加わってくる。さらなる街の発展のためには、前述の通りパンを製作したり、農場で亜麻を育てて織工の作業場でリネンを作ったり、大麦から麦芽を作って醸造したりして、生産ラインをフル活用することが重要だ。

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 もしかするとプレイヤーが思い描く自由な街づくりとは異なるかも知れないが、生活区画向上のために知恵を絞って居留地レベルを上げ、なおかつ戦いのためにコツコツ徴税して蓄えていくのが、本作における賢い領主の姿なのだ。

生産は兵士ユニットの結成にも関係


 つぎに防衛と戦闘について触れていこう。本作におけるバトルは、兵士ユニットを敵ユニットと戦わせて勝利を目指し、最終的には他の領主を排除して領地を占領するか、すべての地域を征服することをクリアー目標としている。

 兵士ユニットは、民兵と傭兵、従者の3種類が存在する。

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 民兵は家族ユニットから徴兵した男性で構成された即席の部隊。兵士、槍、長槍、射手の4タイプを作成できるが、民兵の武器や防具は基本的に生産ルートを活用して製作するか、交易などでそろえなければならない。ちなみに、民兵ユニットを解散すると民間人となってそれぞれの仕事へ戻っていく。

 傭兵は国庫の資金を前払いすることで雇える団体で、グループによって戦闘スタイルが異なる。早期アクセスの時点では歩兵の“貪欲な鷲”、槍兵の“戦場の兄弟たち”、射手の“狂ったガチョウの群れ”などを雇い入れることができた。また、民兵のように装備の心配をせずともよいが、毎月給料を払い続ける必要があるので資金に余裕が出てから活用したい。

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 なお、従者に関しては早期アクセスの時点では不明な部分もあるが、それでも国庫の資金を使って人員を増やし、防具のアップグレードができることを確認した。いずれは市民から昇級させられるとのことなので、精鋭部隊という位置づけなのだろうか。

 兵士ユニットがそろったら、ついにバトル開始だ。手始めに、身近な盗賊キャンプに出兵してみるといいだろう。行軍中は地形や行軍速度で“ストレス”が溜まりやすく、脱力してしまうと走れなくなるため、こまめに待機させるといい。地形や天候によって左右される“効率”は攻撃力と防御力に関係する。目標の戦場付近にも留意して進軍していこう。

 敵地へ侵入した後は、敵ユニットと隣接すると開戦となる。バトル中は“士気”の低下や“効率”をチェックしつつユニット数の減少に目を光らせ、優勢なら撃破するまで戦い抜き、劣勢の場合は撤退の判断を下せばいい。

 戦闘に勝利して盗賊の野営地を制圧すると街が潤い、さらには影響力が手に入る。この影響力は未所有の地域を占領する際に使用できるほか、専用画面で行う外交でも有用だ。外交システムは本稿執筆時点(2024年4月24日)で大半が未実装だが、相手領主を揺さぶる駆け引きができるようになるとのことで、大いに期待したい。

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 街の防衛については“邸宅”がカギを握る。邸宅は1棟のみ建造でき、そこを中心に外郭の塔や城壁、監視塔を設置し、外敵からの防衛を図っていくことになる。執筆時点では開発中となっていた税務署では何ができるのかも気になるところだ。

 ここまで街づくりと戦闘についての所感をコツとともに綴ってきたものの、正直半分も書き切れずに困っている。街づくりにおけるお勧めの配置などにも結局触れられなかった。それだけ本作の要素は膨大で、複雑に絡み合っている。だからこそ街が大きく発展した時に達成感を味わえるのだ。

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 バトルの勝利ももちろんだが、個人的には街を完成させたあとに訪問モードの三人称視点でゆっくりと歩き回る時にいちばん胸が熱くなる。成長を遂げた我が街を目に焼き付けたら今度は難易度ハードに挑戦し、この骨太なストラテジーゲームを思う存分味わう予定だ。

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