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すてきなゲーミングメガネがほしい! “気球”を見る検査装置の会社が夢を叶えてくれた

 いきなり本心が出てしまった。40歳の足音が聞こえてくるとき、全おじさんはこういう夢を抱くようになっている。

 絶対に、だ。

 僕、ミス・ユースケとしては個性的な眼鏡っ娘がいい。力技で夢を叶えるためにオリジナルのメガネを作った。

蝶をモチーフに、メガネフレーム職人さんに発注。世界でひとつだけのオリジナルメガネ。

座右の銘「SAKE HA DAITAI ZENBU UMAI(酒はだいたい全部うまい)」を刻印。

テンプルの端には水色のバラ。

この時点では未完成。レンズが入っていないのだ。

 せっかくなので、ゲームやPC作業に最適なレンズを入れたい。ゲーミング眼鏡っ娘になりたいのだ。

 そこで、ゲーミンググラス(ゲーム向けの機能を有したメガネ)“G-SQUARE アイウェア(以下、G-SQUARE)”を作っているニデックにレンズを入れてほしいと相談。冗談は通じるのか。

来ちゃった。

 「いいよ」と返事をもらったので(※)、愛知県蒲郡市のニデック本社に行きました。

(※記事用に特別に対応してもらいました。ふだんからこういうサービスを実施しているわけではないので要注意)

 ついでに、ゲーム用・PC用メガネについてずっと抱えていた疑問をぶつけたい。ブルーライトカットとかって意味あるんですか? と。

 一瞬、取材現場が凍りついたことを先にお伝えしておきます。

ニデックはただのメガネ屋ではなかった

 訪問の目的は、僕オリジナルの蝶型メガネフレームに、G-SQUARE用のレンズを入れてもらうこと。

 G-SQUAREは、ニデックがサポートするプロesportsチーム・DetonatioN Gamingと共同開発したものだ。

レンズ部分のおもな特徴

  • ブルーライトをカット
  • まぶしさを軽減
  • コントラストを強調して画面が見やすく

ニデックの“G-SQUARE”。フルリムタイプとナイロールタイプがある。ブルーライトをカットしたり、まぶしさを軽減させたり、とにかくゲームに適しているらしい。

 とはいえ、ゲーム用メガネと言われても、効果的かどうかよくわからない人もいるだろう。じつを言うと、僕もである。

 それなのに、何だか妙にひかれてしまう。恋か。また、ニデックはもともとゲーム業界の会社ではないということもあり、G-SQUAREを知るまでは名前を聞いたことがなかった。

 どんな会社が作っているのか知りたかったので、事業内容についても説明してもらった。

愛知県の蒲郡駅に到着すると、ニデック コート事業部の高橋さんが迎えにきてくれた。至れり尽くせり。

お前を立派なゲーミングメガネにしてやるからな。やるのは僕じゃなくてニデックさんだけど。

最初に、社内のショールームに案内された。

 ショールームに入ると、壁の画像に目が釘付けになった。

この気球は!

 稀代の画家による絵画並みに有名なこの画像。「あ!」と声を上げた人も多いだろう。

 視力のいい人はピンと来ないかもしれないので、念のため説明する。眼科やメガネ店の視力測定器をのぞき込むと、この気球が見えるのだ。

 眼鏡っ娘の心のふるさとみたいな画像が、なぜここに。

その装置はうちの製品ですから。

ニデックには医療機器メーカーとしての側面があるんです。眼科分野が中心の。検査機や手術用の機器を作っています。

 
 チャクラがびかびかびかーっと開いた。

 ニデックは検査装置を作っている。眼の検査で気球を見る。もともと断片的に知っていた2点の情報がつながった。僕らは知らず知らずのうちにニデックに触れていたのだ。

 名探偵だったら関係者を広い部屋に集めているところである。犯人がわかりました。気球を見せているのは……ニデックです。

 そして、しれっと登場人物が増えているが、広報課の菊池さんにも同行していただいている。

眼の屈折力や角膜の形状を測定する機器。のぞき込むと上記の気球画像が見える。うれしくて「気球だー!」と言ってしまった。

子どもや身体を起こすのがたいへんな人でも視力を測定しやすいハンディタイプ。お子さんが嫌がらないように、気球の代わりにくまモンが表示されるのだとか。

メガネ量販店に導入されていることが多いタイプ。ランドルト環(“C”みたいなあのマーク)を使った視力測定もいっしょに行える。

ランドルト環を使った測定は5メートル離れる必要があるため、店舗にスペースを用意するのがたいへん。先ほどの装置は1.1メートル、こちらの最新版は60センチのスペースがあればオーケー。

気球を見る検査装置を作っているメーカーはゲーム用メガネも扱っている。合コンで披露したら眼鏡っ娘にウケそうですね。

ちなみに、気球つながりで熱気球パイロットのサポートもしています。

何そのアグレッシブな理論展開。

 

まじだった。

ほかの機器も説明しますね。こちらは眼科の診断で使う装置です。表面の角膜から奥の網膜までの長さを測ります。

角膜の細胞の状態を診る装置です。角膜内皮細胞と言いまして、再生しない細胞なんですね。
炎症を起こしたりすると、細胞が減ったり形が悪くなるので、その状態を調べます。

これは光干渉断層計と言います。網膜の断面図を診る装置です。
眼の奥から発症する病気の場合、表面に見えてくる頃にはだいぶ進行してますよね。そうなる前にわかるわけです。

へぇー。全然わからん!

 

何だかすごそうな眼科医療用の装置。

これはわかりやすいと思います。エキシマレーザ角膜手術装置。いわゆるレーシックの手術装置です。

やっと知ってる言葉が出てきた。超ざっくり言うと視力を回復させる手術ですよね。

国内メーカーだと薬事承認を得られているのはニデックだけです(2018年8月現在)。

ドヤ顔の圧がすごいので太字にしておきますね。

 

レーシックの手術装置。こんんなものまで作っていただなんて。

難しいと頭を抱えているユースケさんに朗報です。もうちょっとポピュラーな手術の装置もあります。

まだ人生で「やったー! 有名な手術だー!」ってテンション上がったことはないですけど。

白内障です。多くは加齢から来る病気なので、80代くらいになると、大半の人に症状が見られるんですよ。程度の差はありますけど。
レンズの役割をしている水晶体が白く濁るので、濁ったものを取り除いて、きれいにしてから眼内レンズを入れます。

大半の眼科用装置を扱ってますので、眼科を開業する際はご連絡くださいね。万全のサポート体制で待ってますから。

そんな予定ねえよ。

 

それと、メガネレンズの加工機も作っています。メガネは医療機器の一種ですから。

要はメガネを作る機械って感じですよね。メガネの生みの親の、さらに生みの親。ニデック=メガネにとってのおじいちゃんおばあちゃんだ。

うちのレンズ加工機を使っていただいているメガネ屋さんは多いです。○○○○さんですとか、○○○○さん、○○○○さんも。

うおおおお。全部聞いたことある。

 

 メガネと言えば福井県鯖江市が有名だ。国産メガネフレームのシェア96%を誇り、メガネの一大イベント“めがねフェス”も開催されているほどに。

 その鯖江市がメガネの総本山だとしたら、ニデックはお釈迦様だ。すべてのメガネっ子はニデックというお釈迦様の掌で暴れる孫悟空だったのだ。

右上にフレームをセット。レンズ部分の内側を赤い丸で囲んだパーツがなぞり、形やサイズをデータとして取り込む。その後にレンズを削り出す仕組み。

眼科はともかくメガネ屋さんを開く可能性はあると思うんですよ。連絡待ってますからね。

隙あらば業務用の装置を売ろうとするのやめてもらえません?

 

職人さんが手作業で仕上げるための加工機もあった。メガネにこだわりを持つお客さんは多く、細かい要望に応えるために、アナログな機器も大事なんだとか。

事業の柱はもうひとつあって、それがいろいろな素材に付加価値をつけたり染色したりする“コーティング分野”です。
わかりやすいのは反射防止膜。たとえばテレビのディスプレイに光が反射すると見にくいですよね。それを抑制します。
付加する効果はクライアントの要望にあわせて、必要であれば開発もします。傷や汚れがつきにくくしたり。

右写真の中央パネルは反射を低減させるコーティングを施している。液晶ディスプレイにも使われる技術だ。

レンズの表面に反射低減のコーティングをするときは“蒸着”という技術を使います。気化させた材料を素材に付着させるんですね。
“お湯を入れたカップラーメンのふたを開けると水滴がついている”みたいな様子をイメージするとわかりやすいと思います。

ちなみに、染色には少し違う技術を使います。メガネのレンズって染料にどぶ漬けするのがふつうなんですけど、それだと細かく色分けできない。
でも、我々の技術を使うとマルチカラーにできて、すごく薄いレンズにも色づけできる。これがうちの特許です。

ほほう、特許。自慢ですか?

自慢です。

 

こういった技術を転用して作ったのが、G-SQUAREのレンズ部分。蒸着でハニカム状のコーティングを施しています。これが“レクアメッシュ”。防眩(ぼうげん)コートと言われるものです。

簡単に言うとまぶしさ防止ですよね。サングラスみたいに外でつけてもいいんですか?

うーん、サングラスとまったく同じ効果があるかと言われると、完全に保証できるわけではないですね。
このハニカムコーティングが使われている現場だと、車の塗装の検査ライン。バーッて照明が並んでいるトンネルを車が通るんです。検査員が目視でチェックするんですけど、非常にまぶしくて見づらい。

そうか。色付きサングラスだと色の見えかたが変わるから。

その通りです。だから、ハニカムコートの検査メガネをかけて作業するんです。ギラつきが少なくなるので、傷やへこみがはっきり見えて目が疲れにくいと評価していただいてます。
G-SQUAREレンズも同様ですね。まぶしさを防止して画面を見やすく。

最初は“眼科医療の会社”なのかなと思ったんですけど、“視えかた”に関することを広く扱う会社なんですね。だから、画面を集中して見るゲームと相性がいいんだ。くー、わかってきた!

 

自社製品のことだけでなく、眼の構造自体にも詳しい。

esports用メガネってうさんくさいなーと思ってたんですけど、もしかしてニデックさんってすごいメーカーなんじゃないですか?

恐縮です。前半の物言いは気になりますけど。

そのうち眼そのものを作っちゃったりして。

眼そのものはさすがに無理ですけど、近いことはやってます。

は?

 

人工視覚の研究をしているんです。失明した人に電極を付けて、網膜に電気刺激を送るんですね。それが脳を伝わって見えるようになるという感じで。

夢ですよね。まだまだ実用化には至っていないですけど、目の前で手を動かしたら「何か動いてるな」と認知できるところまではきてます。

 

 これは本当に興奮した。研究が進んだら病気やケガで目が見えなくなった人とゲームできるようになるかもしれないのだ。もはや神の領域ではないのか。

 ゲーム仲間が増える。単純だけど、僕らにとっていちばんうれしいことだ。想像するだけでわくわくが止まらない。

ところで、この石は何ですか?

 

人工視覚の展示付近に、きれいな石が飾ってあった。

根尾谷で採れる“菊花石”という観賞用の貴重な石です。模様が「ニデック」に見えるということで、ここに飾っています。

私が入社したとき、この石をすごくアピールしてました。「何なんだこの会社」って思いましたね。

 

 夢のあるシステムに感動した後はきれいな石である。振れ幅が大きすぎてくらくらする。

 何なんだこの会社。

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レンズのコーティング工場で蝶型ゲーミングメガネが完成

 ふたりが僕の理解力にあわせて解説してくれたおかげで、ニデックが“頭のよすぎる不思議ちゃん”みたいな会社であることはわかった。

 続いて、G-SQUAREのレンズなどを作る工場を見学させてもらった。

案内してくれたのはコート事業部 生産部 課長の村田さん。

入口に雪だるまの写真が貼ってあった。大雪が降ったときの記念で作ったらしい。

この工場には10万枚くらいレンズのストックがあります。メガネ屋さんで(メガネを)注文するとこちらに連絡が入るので、注文にあったレンズを加工します。染色やコーティングですね。

 

染色には“気相転写染色”という技術を使います。専用の紙にインクを印刷して、レンズと紙を転写機にセットすると、染料が蒸発してレンズを染める、と。
染料にどぶ漬けして染めるとなると、1人前になるのに時間がかかるんですよ。それこそ10年とか。

 

 話によく聞く職人の世界だ。うなぎ職人は串打ち3年、焼き一生。レンズ職人なら染色10年。

 それが、気相転写染色の技術を使えば、それほど修行を積むことなく精度の高い染色ができるようになるという。

前は染料に漬けた時間で濃さが決まっていた。いまは転写紙に任意の濃さのインクで刷っておけばオーケー。もちろんインクはニデック独自のもの。

色のつぎの工程はハードコートですね。レンズはプラスチックですから、傷つきやすいんですよ。表面に特殊な液体を塗って、焼き固めて、頑丈にするんですね。

 

ハードコートの後はハニカムコート“レクアメッシュ”。詳しい作りかたは企業秘密なんですけど、蒸着で成膜しています。ちょうどあそこで仕上げ作業をしてますね。

 

1個1個、手作業で磨いてるんですか? うわー、たいへんだ。

装置で洗浄した後でも、人の手は大切なんですよ。

 

 この辺は作業スピードを落として撮影に協力してもらった。村田さんが「彼女はうちのエースです」なんてスタッフさんをほめたら照れたりして、仲よさそうだ。

 ひと通りのコーティングが終わったら度数や不良の有無を肉眼で確認。合格したら化粧袋に入れて出荷という流れになる。

ハニカムコートのイメージ画像。六角形の部分は0.6ミリ、網目の部分は0.3ミリ。ざっくり言うと、六角形の部分は反射率が高く、光をそのまま通さないので、まぶしさが軽減される。

 工場見学はおもしろい。工場内は機密事項のかたまりなので、記事にできない部分も多いのだけど、でかい装置がごうんごうん動いているのを見るだけでテンションが上がる。

 果たしてこの興奮は伝わっているのだろうか。

 工場の片隅にはレンズ加工の準備がされていた。

 いよいよ僕の蝶型メガネにG-SQUARE用のレンズが入り、オリジナルのゲーミングメガネに進化するときがやってきたのである。

 本日のメインイベント。J-POPで言うとサビ。僕にとってのエレクトリカルパレードである。

これなんですけど。

 

菊池さんと高橋さんがじっくり見て、

笑う。

わざわざ作ったんですか?

すごいメガネだなー。こんなの初めて見た。

僕もです。

 

 ふつうはレンズ加工機を使えばほぼ全自動でレンズができ上がるのだが、ひとつ問題がある。メガネがでかすぎて装置に入らないのだ。

こんな形のメガネは想定していないだろうし、仕方のないことである。

 不測の事態でも頼りになるのが職人の技術だ。レンズ加工が得意な太田さんがスタンバイしてくれていた。

 なお、太田さんは「恥ずかしいので」と、顔出しNG。シャイなところも職人っぽくてかっこいい。

妙なメガネをたくさん作っているフレーム職人さんは、この事態を想定してレンズ用の型を用意してくれていた。これと職人の技術があれば、たいていのフレームに対応可能。

専用の機器でレンズのサイズや形を計測。

レンズ用の型を加工機にセットし、形のデータを取り込む。

G-SQUARE用レンズはゲームジャンルごとに3色が用意されている。僕は一般的なPC作業にも適したグレーを選択。

レンズをセットしてスイッチオン。この加工機は超高速の研磨機だ。水で冷やしながら、どんどん削っていく。

上記の工程を2回くり返してレンズを2枚作り、フレームにはめると、

完成。

 ちなみに、こちらの太田さんは専業の職人ではなく、もともとはレンズ加工機の営業担当。機能を勉強しているうちに上達したのだそうだ。

 ニデックのレンズ加工機は多くの店舗で使われていて、見かけるたびに「あいつがんばってるな」と誇らしく思うらしい。自社製品への愛情が深すぎて親戚のおじさんみたいになっている。

作業中の目つきと背中がかっこよかった。僕の頭の中では、NHK“プロフェッショナル 仕事の流儀”のテーマソングが流れていた。

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ブルーライトカットって意味あります?

 ニデックが眼に関してガチな会社であることはわかった。

 とはいえ、BtoB(法人向け)の製品で成長してきた会社だ。どうして一般向けのメガネを、それもesports向けのメガネを作ることになったのだろう。

 実際に作った人に話を訊くため、会議室へ移動した。

会議室の入口に、G-SQUAREの写真がどーん。

コート事業部 部長 小川さん。

コート事業部 事業部長 川合さん。

コート事業部 研究開発部 阿部さん。

阿部さんの左にいるのは、これまでも案内してくれていた高橋さんです。

 部長と事業部長。偉い人が出てきちゃった。

ちょっと! 偉い人が出てきたら失礼なこと聞けないじゃないですか!

何で失礼なことを聞く気でいるんですか。

コート事業部の面倒を見ている川合と申します。何でも聞いていただいて大丈夫ですよ。なるべくお答えしますので。

あー、よかった。朗らかな方で。それじゃあ、ブルーライトカットって意味あります? 何年か前にそういうメガネがドッと出ましたけど。

 

一瞬、凍り付く会議室。

そうですねぇ、無意味ということはないと思います。バックライトがLEDのディスプレイからそういう波長の強い光は出ていますし、カットして負担を軽減すること自体は理にかなっている。

いきなり言葉を選んできましたね。

察してください。

ブルーライトが気になるなら、そういうメガネでカットしたほうがいいでしょうね。ただ、眼への刺激はそれだけじゃないので、過信は禁物くらいに思っておいたほうがいいかと。

G-SQUAREはいわゆるブルーライトカットメガネとは違うんですよね。

ええ。メガネの機能というと「ブルーライトカットなんでしょ?」って言われるんですよ。ブルーライトもカットしますけど、ゲーマーの意見を取り入れて、我々の技術で別の機能も加えて、G-SQUAREという形にしています。
単なるブルーライトカットメガネ、PCメガネで片付けられたくないのが本音です。

ブルーライトカットは、決して画面を見やすくするための機能ではないですから。

ちなみにですね、薬機法の関係で「身体にいい」とか「眼精疲労が取れる」みたいにアピールしてはいけないんですよ。

レンズについて勉強させてもらいましたけど、たしかに「目が楽になる」みたいに直接的な表現はなかったような。健康に関わることを断言しちゃいけないのかな。

そういうところはあります。「ゲームに適している」はいいけど「疲れにくい」はだめなんです。医学的に証明が難しいんですね。

 

僕、PCを使う時間が増えたら左目の視力が落ち気味なんですよ。利き目だからなのかな。少しでも目の負担が和らぐんだったらG-SQUAREのレンズを使いたいなと思いまして。

近いところを左目で見てるんでしょうね。毛様体筋が固くなってピントを合わせにくくなるんですよ。
僕の場合は毛様体筋じゃなくて水晶体が固くなってます。

難しいこと言ってますけど、要は老眼です

 

 事業部長と部長がいきなり眼科ジョークをぶっこんできた。この会社、油断できないぞ。

 G-SQUAREは度入りに対応できるので、老眼鏡にするのもおすすめだそうです。

トップブランドは一日にして成らず。ローマといっしょ。

そもそもどうしてesports用のメガネを作ろうと思ったんですか?

営業側から「esportsに適した製品を作りたい」と意見が出たのが最初ですかね。一般消費者向けの製品(スマホケース)を出し始めた頃で、企画、開発、製造まで一貫してやろうと。立ち上げは5年くらい前かな。

最初のモデルが発売したのが2016年でしたっけ。いまから5年前に立ち上げたとなると、開発に3年くらいかかってるんですね。

いまはテレビでもesportsが取り上げられるようになって、だんだん認知度は上がってきましたけど。5年前は全然わからなかった。

一部のゲーム業界人は注目してるけど、くらいでした。

おもしろいからやってみようかって。

えっ? 理由それだけ?

そうなんですよ。いろいろと調査をしているうちに、(現在、活動をサポートしている)DetonatioN Gamingさんと会って話したのがスタートですね。

いままでにない世界だし、これから伸びるかもしれない。その当時でもすでに競技人口は何千万人みたいな話でしたけど、日本ではあまり知られていなかった。
本当に新しいスポーツの形になるかもなーなんて。まぁ、最初はダメ元でねぇ。

レンズ加工機を作ってるからレンズは自前でできますよね。フレームはどうしたんですか?

いまのメガネフレームはほとんど中国産なんですよ。やるからには、とくに最初(※)は、メイドインジャパンにこだわっていいものを作ろうと。
で、福井県鯖江市のメーカーさんといっしょに、高橋たちがデザインを考えて、僕は「かっこわりいだろー、それ」なんて文句を言いつつ(笑)。

(※発売当初は高品質にこだわったプロフェッショナルモデルのみだった。いまは価格を抑えたカジュアルモデルもラインナップされている)

この形になるまでに……ねぇ阿部くん。

 

雨に打たれた子犬のように悲しい顔をする阿部さん。

デザイン画でけっこう却下されましたね。

したねー。ゲーム用のメガネじゃないですか。となると、24インチくらいのディスプレイ全体が見えないといけない。ふつうのメガネよりも広い範囲を見たいわけですね。

だから、レンズを大きくしたかったんですよ。

野暮ったいなーって。レンズのカットを斜めにするだけでもシュッとするんじゃないかとか、いろいろ言いました。

デザインが決まっても、フレームの知識はゼロでしたね。素材はアセチ(アセテート)っていう樹脂にするか金属にするか。金属にするにしても、全部チタンにすると強度が心配なので、ゴムメタルを使ったり。

テンプルは難しかったですね。G-SQUAREのテンプルはふつうのメガネより短いんですよ。ヘッドセットをしたときに痛くないように。

 

一般的なメガネと比べてたしかに短い。自分で曲げられるので、普段使いするときは耳にフィットするようにしておくといいらしい。

そこにDetonatioN Gamingさんの意見も取り入れて。みなさんヘッドセットをしますよね。だから、レンズがズレにくくて、なおかつ付け外ししやすいように。
あと、1日に10時間は練習するので、長時間かけても気にならないようにしてほしいと。

フレームにもゲーマーの意見が入ってるんですね。

そうですね。それと、レンズの色にも意見をもらいました。
ふつうにブルーライトカット機能をつけるとレンズが黄色くなるんですけど、うちの転写染色を使うと別の色にもできるんです。で、色はなるべく薄めに。濃いと画面が見にくくなっちゃいますから。

“眼を守る”はコンセプトのひとつ。それだけじゃなくて、まぶしさを防止したりコントラストを強調して画面を見やすくしたりして、長くゲームに集中できるようにしました。

“刺激から守る”というより、画面を見やすくすることで、複合的・間接的に負担を減らすことがメインなんだ。メガネをかけてヘッドセットして集中してってなると、肩凝りますもんね。

 

ちなみに、僕のメガネは一般的なモデルの3倍くらい重いので、かけていると鼻あてのところがすぐに疲れる。デザインが気に入ってるからいいのだ。

じつはですね、リアルのスポーツには向いてないんですよ。テンプルが短いから。僕はゴルフが好きなんですけど、ほらショットのときに下を向くでしょ。たまに落ちるんですよ。

何でわざわざ弱点を言うんですか。

いやいや、いいんですよ。esportsにこだわって作ったメガネなので。ほかのスポーツに合わせることはない。
たとえば、オークリーみたいにリアルのスポーツで広まったメガネブランドもあります。高い目標を掲げて、ひとつの世界でトップブランドを目指したい。最初からやって、いいものを作り続ければ、可能性はありますから。

エントランスにはG-SQUAREが誇らしげに展示してあった。

たくさん売るんだったら、どんなシーンにも合うと打ち出したほうがいいんです。
でも、ほかの世界に打って出るにしたって、esports界隈での立ち位置を確立させてから。ブランドってそういうものだと思うんですよ。軽く考えると価値が下がるから、最初の展開は最小限に。
一日にして成らず。ローマといっしょです。長い時間をかけて積み上げていかないと。

路線を外れそうになると、川合の指導が入ります。

うおおおおおお。何も考えずにesportsに参入すればいいと思ってるやつらに聞かせてやりたい。

川合さん、録音されてますからね。

あー、そっか。あんまりかっこいいこと言えないな(笑)。

 

 上の立場の人がこういうことを言ってくれるのはうれしかった。現場の人はこだわっているのに上層部は利益優先だからやりにくい、なんて話はどこからでも聞こえてきそうなのに。

もちろんお金の面も気にしますよ。でもね、ビジネスはちょっと余裕がないとうまくいかないと思うんです。

予算的な余裕ですか?

うーん、それもそうですけど、スケジュールや気持ちのほうが重要ですかね。esportsはすぐに結果が出るビジネスじゃないと思ってますから、ゆとりを持って挑まないと。

 

いまは“いいものを作っても売れない時代”なんて言うじゃないですか。僕は少し違うように思うんです。
たしかに、ビジネスモデルがしっかりしてないと製品は売れませんけど、どっちを土台にしたいかと言われたら、やっぱりものを作ること。ビジネスモデルを作るのはそれからでありたいんです。

なるほど。「ものが売れない時代だから、いいものを作っても意味がない」みたいな言い訳をしてはいけないという話にもつながりますね。

モノづくりをしている会社のプライドですね。安く作ろうと思ったら海外でできます。それよりも、いいものを作って、付加価値を見出してもらいたい。“製品のおもしろみ”を感じていただけるものがいちばん。
ブランド品も似たところがありますよね。好きなブランド、有名なブランドだと満足感があります。これはすごく大事。

すごくわかる! いいものを持ったり、好きな服を着ると、1億倍気持ちいいんですよ。これ好きなマンガのセリフなんですけど。

かっこよく言えば「心をとらえる製品をいかに作り出すか」ですかね。コート事業部には信念があるんです。それが“BtoBtoC”。
我々のメインのビジネスは、お客さんに直接届けるわけではなく、間に別の企業が入ります。でも、最後に使うのは一般の消費者だから、消費者が喜ぶものを作ろうということですね。

一般の消費者向けと言うと、G-SQUAREの前にスマホのカバーを出しました。転写染色の技術を活かして。

それまでグラデーションみたいに細かく染色したカバーはなかったと思います。お客さんの「すごくいいものでした」みたいな声が届いて、涙が出ちゃった。
BtoBのビジネスって、叱られることはあってもほめられることはまずないんです。だから、お客さんの声は本当にうれしかった。消費者のためにモノづくりをしたいと、改めて感じました。

川合さん、めっちゃ語りますね。

川合は技術畑出身なので、製品のことになると熱くなっちゃうんです。

ゲーム業界のアルフィー高見沢を目指す

 僕はG-SQUAREをかけるうえでの“信頼”と“説得力”がほしかったのだと思う。だから製品や工場を見せてもらった。

 説得力は抜群だった。だって、眼科の医療機器メーカーが本気で作ったメガネなのだ。そりゃ高品質だろうなと唸るほかない。

 本来ならメガネは一点もの。ユーザーのこだわりを後押しするアイデアが、予算などの都合で保留になっているという。その名も“世界でひとつだけのG-SQUARE”。フルオーダーでG-SQUAREを作る企画である。

 フルオーダーはコストも時間もかかるため、大量受注が難しい。それなら、大会やキャンペーンの賞品にするのはありだと思う。高橋さんは「いっしょにesports大会を開けるメーカーさんが見つかれば可能性はあるかも」と言っていた。ぜひ実現してほしい。

ある意味、僕のメガネはテストケース。ニデックのみなさんにも大好評でした。

 ふだんの僕は非メガネだ。この蝶型メガネをかけると、「ゲームをするぞ」、「仕事をするぞ」とスイッチが入る。ある種の変身メガネである。こういうのがトレードマークのプロプレイヤーが出てきたらおもしろい。

 こだわりのものを身に着けるのは気分がいい。ゲームも仕事も気分よくできるし、広義ではゲーミングデバイスの一種と言ってもいいと思う。僕は蝶型メガネを一生使い続けるだろう。あと何年かしたら老眼鏡にする予定だ。

いいですねー、派手な老眼鏡。ぜひアルフィーの高見沢さんを目指していただいて。

 

 ゲーミング眼鏡っ娘になりたいと思っていたら、ゲーム業界のアルフィー高見沢を勧められた。いいな、それ。


 G-SQUAREとは関係ない話をひとつ。

 僕のメガネはオーダーメイドメガネ専門店“glass tailor”に発注した。細かいオーダーにも応えてもらえたので、絶対に人とかぶらないメガネがほしい人におすすめです。

glass tailor公式サイト
http://www.glass-tailor.com

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