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esportsをテーマに白熱した、ゲームショウ初日の基調講演をリポート【TGS2018】

 2018年9月20日(木)から9月23日(日)まで、千葉・幕張メッセにて開催中の東京ゲームショウ2018(20日・21日はビジネスデイ)。初日の9月20日には、オープニングを飾る基調講演が行われた。その模様をお届けする。

 基調講演のテーマは、“esportsが“スポーツ”として広がるためのロードマップ ~クリエイティブからファンづくりまで、ゲーム業界が取り組むべき課題と今後の展望”。日本国内でも普及の機運が高まるesportsについて、課題や今後の展望がディスカッションされた。

 講演に先立ち、まずはコンピュータエンターテインメント協会(CESA)会長の早川英樹氏が主催者として登壇。「新会長として、こうしてゲームショウを迎えることができまして、うれしく思います。今回の講演のテーマであるesportsは、いまのゲーム産業のトレンドを端的に象徴していると思っています」とあいさつを述べたのちに、ゲーム市場の現況や、esportsの位置づけなどを簡単に説明した。

早川氏は2018年5月より、CESAの会長に新たに就任。

 早川氏が紹介したデータによると、国内ゲーム市場は順調に推移しており、直近の3年間では、前年比で10%を超える成長を維持。拡大傾向はグローバルな市場でも同様で、市場規模は15兆円を超えてきている。
 国内のゲームプレイヤー人口に目を向けると、継続して遊んでいるプレイヤーは全体の40%で、その人工は約4500万人。休眠中、または以前に1、2度遊んだことがあるプレイヤーを合わせると、全体の85%がゲームを体験したことがあるという結果が出ている。
 ゲーム産業の構図という点では、携帯電話などのデバイスやネットワークの進化で、「ゲームがいっそう身近になり、新たな楽しみが広がってきています。大衆向けエンタテインメントとしての地位を確立したと言えるでしょう」と早川氏は分析。ただ遊びかたの自由度が広がったぶん、適切な遊びかたを設定することも重要で、CESAとしても、未成年保護のガイドライン制定などには注力しているという。

順調な成長を続ける、国内および世界のゲームマーケット。

 続けて早川氏が説明したのは、ゲームとesportsの親和性だ。ゲームという言葉には、遊びごと・競技という意味があり、「アジア競技大会」は“Asian Games”、「オリンピック」は“Olympic Games”となる。
 「この語源からも親和性は見てとれ、ゲームの競技性こそが、おもしろさを引き立てる重要な要素だと思っています」と語る早川氏。競技性が高まることで、選手や指導者、ファンやサポーター、そしてメディアという構造が生まれることは、一般のスポーツと同様であると指摘した。
 なおesportsの認知度に関しては、この1年間で14.4%から41.1%と大幅にアップ。視聴者数は382.6万人という状況で、「まだまだ伸びしろがある市場だと考えています」(早川氏)という。

日本のesportsの現状がさまざまな角度から解説された。

パネリストが語るesportsへの取り組み

 早川氏のあいさつと市場解説が終わると、いよいよ基調講演がスタートとなった。パネリストは、日本eスポーツ連合(JeSU)会長の岡村秀樹氏、カプコン常務執行役員 eSports統括本部長の荒木重則氏、コナミデジタルエンタテインメント 『ウイニングイレブン』シリーズ制作部長の森田直樹氏、Asian Electronic Sports Federation(AESF)会長のケネス・フォック氏、日本サッカー協会(JFA)副会長の岩上和道氏の5名。モデレーターは、日経xTECH/日経コンピュータ副編集長の玉置亮太氏が務めた。

 まずは各パネリストが、自己紹介をかねて、esportsに関する活動や取り組みを説明。トップバッターとなるJeSU会長の岡村氏は、マーケットの現状、JeSUのミッション、活動実績や今後の展開を語った。
 esportsのマーケットについては、この1年で「劇的に認知度は上がってきています」という岡村氏。いっぽうで、海外と比べると大きく出遅れていることも課題としてあるが、ゲームの進化や法律面の対応などで、今後成長していく環境は整いつつあると分析する。

 JeSUの状況については現在、会員企業40社、スポンサー6社と順調とのことで、“esportsを通じて青少年および国民の心身を育成する”という理念のもと、さまざまなミッションを設定している。活動実績も、プロライセンスの認定・発行に加え、大会の開催や選手派遣など豊富。2019年は、茨城国体のeスポーツ選手権や、日本・サウジアラビアのeスポーツマッチをサポートすることも決定している。

日本のesports事情を説明した岡村氏。

海外には出遅れているものの、成長する土壌は整ってきている。

設立以来、精力的な活動を展開してきているJeSU。

 続くカプコンの荒木氏は、『ストリートファイター』シリーズを例にとり、“歴史”、“世界展開”、“新機軸”、“草の根”という4つの観点から、具体的な事例を挙げながらesportsへの取り組みを語った。
 “歴史”という点においては、すでに1992年に『ストリートファイター』シリーズのゲーム大会を両国国技館で開催。そこを皮切りに、現在まで多彩な大会を実施してきており、現在は“世界展開”につなげている。代表的なものが、世界30カ国で展開している“CAPCOM Pro Tour”だ。

 “新機軸”として荒木氏が挙げるのは、チームバトル。1対1がメインの対戦格闘において、団体戦大会の開催にも積極的にチャレンジしている。「先日は3人チームでの団体戦を行いましたが、ドラマ性も生まれて、おもしろい取り組みだったかなと思います」と荒木氏は語る。またプレイヤーのすそ野を広げる“草の根”活動としては、例えば2018年には、全国6都市でキャラバンを実施。荒木氏いわく、「金の卵を探す活動」だという。

カプコンのesports事業を推進する荒木氏。

“CAPCOM Pro Tour”は、世界30カ国で展開。その頂点となる大会が“CAPCOM CUP”だ。

団体戦には、個人戦とはまた違った魅力がある。

金の卵を見つける、その名も“ルーキーキャラバン”。

 3番手のパネリストは、コナミデジタルエンタテインメントの森田氏。まず自分の経歴と、コナミグループの概要を簡単に紹介したうえで、esportsにおける展開を解説した。同社がesportsの対象としているジャンルは、サッカー(『ウイニングイレブン』)、カードゲーム(『遊戯王』)、野球(『実況パワフルプロ野球』)の3つ。ここでは森田氏がタイトルの制作部長でもある、『ウイニングイレブン』シリーズの事例が語られた。

 『ウイニングイレブン』シリーズは、1995年の発売以来、現在では世界累計販売本数が1億本を突破している人気作。ゲーム大会としては2001年から取り組みを始め、現在は“PES(PRO EVOLUTIONS SOCCER)LEAGUE”という名称の公式大会を実施している。
 ジャカルタで開かれたアジア競技大会では、デモンストレーションのタイトルとして『ウイニングイレブン2018』も選出され、日本チームが優勝したのも記憶に新しいところ。2019年に行われる茨城国体のeスポーツ選手権でも、対象ゲームとなることが決まっている。

『ウイニングイレブン』シリーズを統括する森田氏。

KONAMIが誇る多数のコンテンツの中、esportsの主軸は、サッカー・カードゲーム・野球となっている。

日本では、サッカーのesportsの代名詞的な存在になりつつある『ウイニングイレブン』シリーズ。

 続いては、ここまでと少し違う立場から、ふたりのパネリストがスピーチ。最初はAsian Electronic Sports Federation(AESF)会長のケネス・フォック氏で、まずは先日のアジア競技大会でのeスポーツマッチの様子が動画で流されたのち、実施のいきさつや流れが説明された。
 「ゲームファンのみならず、一般の人の注目も集めたイベント。重要な一歩だったと思います」と大会を振り返ったフォック氏。AESFとしての今後のビジョンやミッションも説明したうえで、「アジア各国の団体の発展をサポートすることが重要と考えています。esportsを、さらにつぎのレベルにまで高めていきたいですね」と、アジアを束ねる連合の会長としての抱負を語った。

アジアでのesportsの市場拡大を目指す、AESF会長のフォック氏。

135名のゲームプレイヤーが集結したアジア競技大会のesportsマッチ。

AESFの今後の展望なども、スクリーンで紹介された。

 ラストバッターは、JFA副会長の岩上氏。esportsならぬリアルスポーツの協会関係者としての立場から見解を述べた。ここではJFAの概要や理念、対象スポーツがひととおり説明されたのち、esportsへの取り組みも紹介。なおJFAでは2016年11月の理事会決定で、eサッカー事業を創立している。
 「老若男女や障害を問わない包括的な部分や、健全非暴力、世界的ということでesportsはサッカーの本質と合致していると受け止めています」という岩上氏。事業を進める目的としては、ゲームを通じてサッカーファンが増え、サッカーファミリー全体が拡大することが念頭にあるそうだ。

 活動の一環として、春に公式大会“eJ.LEAGUE”を開催。2019年に行われる茨城国体のeスポーツ選手権も共同開催する。今後はゲームにおける“サッカー日本代表”も作っていきたい方針で、リアルスポーツ同様に、代表強化・指導者育成・ユース育成に取り組んでいくとのこと。

esportsの拡大にも尽力する、JFAの岩上氏。

今後もesportsには積極的にアプローチを進めていく方針だ。

課題に迫まるディスカッション

 講演の後半は、登壇者によるパネルディスカッションのコーナーに。ここではまず、司会の玉置氏がesports普及における5つのテーマを提示。各パネリストが、より重要だと思う項目を〇×で意思表示し、それに伴ってトークが交わされる流れとなった。5つのテーマは、[1]プレーヤーの質と量の拡大、[2]視聴者やファンの拡大、[3]esports向けタイトルの充実、[4]興行としての魅力向上、[5]日本のesports業界の国際競争力の向上。

 最初のトークテーマは、全員が〇を挙げた、“プレーヤーの質と量の拡大”について。これには、「どの課題もリンクしていますが、あえて言えばこれがいちばん重要だと思います」と岡村氏。続けて、「プレイヤーが切磋琢磨できる環境があって初めて実現できることですし、草の根をどう育てていくかも重要だと考えています」と語った。

 荒木氏は、「『ストリートファイター』シリーズの場合、質の面では、歴史があって有名プレイヤーにスポンサーも付いているような状況です。量については、新規獲得がもちろんカギなのですが、コミュニティの交流や広がりも重要だと思います」とコメント。また森岡氏は、すそ野の広がりという部分で、「据え置き機のクオリティーや操作性をモバイルで再現できれば、デバイス面でのすそ野も広げられるのではと思います」と、その可能性を語ってくれた。

 つぎは“視聴者やファンの拡大”について。このテーマについては、岩上氏が「本物のサッカーから入ろうがゲームから入ろうが、サッカーを好きになってほしいんですよ。入り口はかまわないので、サッカーファンが増えることが大事だし、esportsが盛んになることはありがたいと思います」と、esportsの意義をアピールした。
 また荒木氏は、大会でのプレイヤー紹介映像の演出を例にとり、「ゲームファンはゲーム画面だけ見ていても楽しめるかもしれませんが、どれだけ“番組化”するかも大切だと思います。エンターテインメントのパッケージとして、興味を持って見てもらうことが重要なんです」と、コンテンツとしての見せかたの工夫に触れた。
 「一般にもわかりやすい見せかたで提供することが、esportsの広がりとなり、プレイヤーの増大にもつながるのではと考えています」(荒木氏)。

 テーマは残り、議論もつきないなかで、講演は惜しくもここでタイムアップ。最後に各パネリストが、今後の展開を含めて締めの言葉を語った。リポートのまとめとして、そのコメントの概要を紹介する。

岡村氏
「環境をいかに整えるかが大きな課題ですし、今後は国際組織との連携もより深めていき、国際大会も数多く開催していきたいですね。認知の進化と環境整備が、esports選手の地位向上にもつながるのではと思っています」

荒木氏
「草の根活動という点では、“ルーキーキャラバン”をさらに全国各地に展開していきたいですね。そして『ストリートファイター』シリーズを長年やっている弊社としては、このタイトルをesportsの国技にしたいと思っております」

森田氏
「esportsとしての『ウイニングイレブン』シリーズのスキルをより磨いていく、ということが目標です。実際にサッカー戦術を熟知している人が強い、いわばサッカー脳を持っている人が強いような境地に持っていきたいと思います。esports全般に関しては、ゲーム業界だけではなく、いろいろなスポーツ関連の方とともに、オールジャパンとして推進できればと思っています」

フォック氏
「esportsは、将来的にはオリンピック競技にしたいと思っています。ただ日本のJeSUのような団体がない、アジアの国も多いのが実情です。草の根レベルでの活動はもちろん、政府との協力という面でも積極的に交渉し、より認知度を広げていければと思います」
岩上氏
「まずは、茨城国体のeスポーツ選手権を成功させたいというのがひとつです。ふたつめは、他人を思いやるリスペクトの理念をesportsの世界でも持っていただいて、いっしょに進めていくことが大事だと思っています。今回フォックさんは香港からいらしてますが、いずれesportsで、日本代表と香港代表との試合もできればいいなと思っています」

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