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【レインボーシックス シージ】プロリーグ シーズン10“Aero vs GIANTS”解説 なぜこの試合が”歴代最高の試合”と評されたのか

『レインボーシックス シージ』プロリーグ シーズン10 ファイナル。Day1に行われたAerowolf (以下Aero)vs Giants Gaming(以下GIANTS)の試合は、歴代最高の試合と評した人も多かった。

長年「APACの門番」と言われていたAeroが、ファイナルのステージでEUチームに勝利し、シーズン10ベスト4へと勝ち上がったことも評価される一つだろう。

また、勝つために相手の弱みを突いて勝利する試合も多い。それは当然のことだが、この試合は違った。お互いの強みが激しくぶつかり合う展開でだった。

だが、お互い強みがぶつかり合う試合はこれまでもあった。では、なぜこの試合が”歴代最高の試合”と評されたのか。それを少しでも伝えていけたら幸いだ。APACの歴代最強チームについて文章を書けることを誇りに思う。

両者の最大の強みが類似。そしてその強みは世界でも希少なものだった

現在におけるレインボーシックス シージ(以下、シージ)の「技術」は、2種類あると考えている。“シージ的技術”と“FPS的技術”だ。

シージ的技術は皆さんご存じの通りで、補強壁を破壊してマップ的有利を獲得し、オペレーターの固有ガジェットを用いてプラントや殲滅を成立させる、もしくは阻害する。シージ以外のFPSでは成立しないような要素と言える。

対して、FPS的技術はほかFPSでも見られる要素だ。射線管理やカバー意識、ガジェット使用による確実な人数有利の獲得。そのためのチーム連携などが代表的だろう。

 

AeroとGIANTS。この2チームはシージの基本を備えた上で、高いFPS的技術を保有するチームだと言えるだろう。Plant合戦よりも、チームでの連携を活かした撃ち合いが多く展開されたことが象徴的だった。

この2チームの特性と強みはひどく共通している。そしてその強みに確かな自信を持っていた。ほかにもFPS的連携に優れたチームは存在するが、瞬間的な作戦形成などの点において、このレベルまで至っているチームはそういない。

ゆえにお互いの強みがぶつかり合い、苛烈な撃ち合いとカバーが繰り広げられることになったのである。

驚異的なCoverの連続。相手を包囲する動きと包囲し返す動きが噛み合って、短時間のうちにキルが大量発生している。

チームで連携して遊撃を潰そうとする動きと、チームで連携してそれを阻止しようとする動き。二つの意思がぶつかり合って互角に試合が展開された。前述したFPS的技術を高めようとした場合、必然的にチームで撃ち合っていくことが求められる。

 

味方同士の近い距離感を保ってチームで勝負し、確実な有利を奪い取ろうとする。または、その狙いを成立させるために発生せざるを得ない”布陣の隙”……人員や意識の薄い箇所を突破することも狙う。

相手を上回るために勝負所を作り出していく意識、勝つために自らアクションを起こしていく高い意識が、AeroとGIANTSにはあった。

 

その中でも読み合いや対策が講じられ、どのラウンドも最後までどちらに勝利が転がり込むのかギリギリまで分からない。これは、そのような試合だった。

互角のラウンド展開と逆境からの大逆転も多く、ラウンドも取ったり取られたりと常に読めないスリリングな試合だった。その中でも、両者で異なっていたことがある。

Aeroはチーム連携によって確実な優位を得ることを重視し、GIANTSは個人でも相手の予測を超えることを重視していたのだ。

Aeroの特性 ―確実な有利を獲得するための集団意識―

第1マップカフェ、2階読書室防衛に対するGIANTSのラッシュ。チームの総力をかけて暖炉と読書、メイン廊下に同時に攻勢を仕掛けている。Aeroに対応の的を絞らせないような形だが、Aeroの情報共有とクロス作成の精度の高さはGIANTSの作戦を封殺した。

通常のチームならばGIANTSの複数箇所へのアプローチに情報が錯綜してもおかしくない。判断を狂わされるチームは多いだろう。

しかし、Aeroは違った。GIANTSメンバーのデスシーンを見ると、複数方向から撃ち込まれていることがよく分かる。Aeroの情報共有力とクロス意識の高さが如実に表れている。

 

また、確実にCoverが入れない状況で選択されるMentalistC MUTEのハイド選択。隠れながらも、味方が撃ち合い始めたら即座にCoverに入っている。この一連の行動がAeroの意識を象徴している。

 

このラウンドに代表されるように、Aeroは複数人で勝負を挑むことが非常に多かった。もちろんGIANTSもチーム勝負は多い。しかし驚いたことに、AeroはEU最上位チームより高い集団連携の資質を見せている。

Aeroの意識は広く、室外まで及び、チーム全体でエントリーに対して戦うのみならず、室内で孤立した遊撃のカバーに室外飛び出しを用いることも多々あった。シージにおける室内/室外の概念にとらわれず、チームとしての勝負が成立するなら武器として用いる。それがAeroにはできていた。

 

そうして集団としての力を示した後に、単独でリスキルやハードな撃ち合いを挑む。その緩急はGIANTSを苦しめ、得意の柔軟性を減退させることに成功していただろう。

 

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GIANTSの特性 ―予想と予測を超えること―

第2マップヴィラ、このラウンドでは、GIANTSの特性による判断力が光った。現地へのエントリーを果たし、攻撃側としては大きな成果を上げた状況。しかし、GIANTSはその成果を容易く捨てた。

現地の一部を取ったとはいえ、完全には掌握できていない。そして遊撃が背後からリテイクを仕掛けてくることが予測される。その状況においてマップ占有率の観点から、GIANTSは一度取った有利を捨てるという選択に出た

それは完全に成功したとは言えないが、その後のKorey SLEDGEのエントリーとダブルキルを補助したのは間違いない。Aeroを予測が難しい状態に追い込んでいる。

 

今回のラウンドは攻撃側だが、GIANTSは防衛でも位置取りや勝負所、ローテーションによって想定外での戦いを作りだそうとする。そのためなら、有利を捨てることすら厭わない。

そしてこのラウンドに関しては”相手の予測をずらす”という視点を抜きにしても、相手の包囲リテイクを耐える選択と比べた場合、合理的な判断とも言えるだろう。

 

「ボムを制圧した」という攻撃側としての巨大な利益。それに固執せずに捨てられるチームがどれだけいるだろうか。一見すると下策にも受け取れる優れた判断だが、これは冷静な状況とリスクの分析が生み出している。

 

メリットを抱え続けることが後のデメリットに繋がるなら、放棄することも厭わない。苦労して得たからとそれにこだわらない。人間はその判断を下すことが難しい。得たものにしがみつきがちだ。得たいものに対して、得たものに対して「それが本当に勝利に繋がるのか?」そう問いかけることの重要性をGIANTSのラウンド勝利が伝えている。

(途中のKoreyのTKはご愛嬌ということにしておこう。GIANTSのフレキシブルさは、味方の位置把握の難しさにも繋がっているのだろう)

 

シージに限らず、勝負事では「予測できること/予測されないこと」が重要になってくる。GIANTSがEUで頭角を表しているのは伊達では無いことを示すラウンドだった。

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最終局面 ―自らのアイデンティティを保ち続けた方が勝利を手にした―

お互いの強みを発揮しつつ、高度な読み合いを繰り広げ、試合は第3マップまでもつれ込んだ。ミスや攻撃の完成度という点では、正直言ってAeroは劣っていたようにも感じられるが、なぜこの試合を勝利することができたのか。

 

以下のクリップで重要なのは、人数有利を獲得して籠もっていられるAero防衛が、残りの全員で場所が判明したGIANTSに対して「まるで攻め側のように」勝負に出ているところである。

 

人数有利を獲得しており、残り時間も限られていた。待っていても勝てた状況にも見える。だが保守的になれる状態でも、Aeroはチームで勝負していった。勝手口外で有刺鉄線を破壊した音、突き下げとの撃ち合い、そういった情報から3人がかりで室外の1人を倒す選択を取ったのだ。

どんな状況でも強気に勝負していく姿勢、そしてそれを個人の無謀ではなくチームのリスク選択として成立させることができている。

 

結果的としては、それによって勝敗がどちらに転ぶか分からない状況になってしまった。だが、自分たちで勝負所を作り出す姿勢をたとえどのような状況でもAeroは失わず。……それは最終的な試合の勝利に繋がった。

試合の最終ラウンド。

GIANTSは確実に動きが固くなっている。現地に籠もり、相手の攻めを受け止めるような形になってしまっていた。全くもって彼ららしくない姿だ。

もちろんAeroの遊撃処理能力がその行動を導いたのもあるだろう。しかし、GIANTSの根底にある意識は「相手の予測を超えること」だったはずだ。

現地に籠もる戦い方では、Aeroの予想を超えるべくも無い。攻撃側の想定内にとどまるだろう。負けそうな状況に自ら勝負所を作る意識が不足した。それが彼らの強みだったはずだが、その姿勢を保てなくなってしまっていたのだ。

対するAeroは、ダブルバー側からキッチン方向にのみ圧力をかけられている状況。その状況で取った選択は正面ロビーからトイレに攻勢を仕掛けることだった。

ロビーは海岸線の中でも攻撃側が取るのに苦労する場所の一つであり、そこに一切の圧力をかけないまま一方向から進行していけるチームはそういない。

その強気な選択は、GIANTSの保守的な態度と噛み合って不意を突いた。相手の“予測を超えること”でEU地域を勝ち上がってきたGIANTSは、Aeroという新たなるAPAC最強チームに“予想外”の苦戦を強いられた。皮肉なことに、予想と意識の外を突いてきたGIANTSは最後の最後で予想外を突かれて敗北したのだ。

 

Aeroが保ち続けたリスク選択の覚悟はGIANTSの予想を超えた。そして彼らにはその覚悟を成立させるだけのFPS的技術とチーム連携、リスク選択力があったのだ。

終わりに

AeroはEUチームを破った初めてのAPACチームという名誉を得て、APACの門番からAPAC歴代最強チームへと進化した。

 

今回の内容は彼らの強さと勝利を語る一つの視点でしか無い。違う視点で見ればまた違った勝因が見えてくるはずだ。一つの視点だけで見て、それで終えてしまうにはもったいない試合だ。

Aeroの、GIANTSの強さの秘訣。また、なぜAeroがDarkZeroに大敗したのか。それを探ることはチームの成長に、日本競技シーンの成長に繋がるのではないかと思う。

文:Fuji3/編集:工藤エイム

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