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【レインボーシックス シージ】プロリーグ シーズン10“CAG vs FAV”解説 合理性と柔軟性の変革CAG vs日本最強のリスク選択力FAV

「日本プロリーグシーズン10現時点における最高の名試合だった。」

これから書いていくのはそういった試合だ。ゆえに、解説に入る前に長々と言葉を並べ立てる必要は無い。
なぜなら、内容がすばらしいからだ。

今回はFAV gaming(以下、FAV)、 CYCLOPS athlete Gaming(以下、CAG)、両チームの良さが際立って現れていたファーストマップ銀行に的を絞って解説していく。彼らが何を考え、行動し、どのような結果を生み出したのか。その一端を少しでも感じ取っていただければと思う。

 

① 根本的な意識改革。多様で柔軟な戦術の片鱗を見せるCAG攻撃

今までのCAG攻撃は、ひどく合理的な攻めだった。しっかり手順を踏んで着実に正攻法を進めていく形。その完成度は高く、国内ではごく一部の最上位チームだけがなんとか抗うことができる。そういった状態だった。しかし、世界の場に出て、それは完膚なきまでに叩きのめされた。まともに手順を踏むことすらできなかった。

国内リーグでわずかに見えていた「合理的であり過ぎるがゆえに行動が読みやすく、自分達の行動も変えられない」という部分。そういった面が強く表れたのが、先日のSix Major Raleighだっただろう。

 

CAGは変革を求められていた。そしてこの試合は、その“変革”が進んでいることを明確に示した。

 

以下のクリップは2階防衛に対するCAGの攻め。メイン階段から会議室にエントリーして人数差を作ることで現地制圧を狙った。比較的に尖った戦術であり、それは今までの合理的なCAGからはかけ離れた姿であった。

 

▲CAG攻撃の大きな変化を示す、2階会議室への1分40秒での詰め。

 

証券取引とエレベーターの前にスモークを使い、LIONのガジェットも同時に使うことでエントリーの確実性を高めている。用務室からエレベーターにかけては2階での防衛側の前線になることも多く、撃ち合いが発生しやすい。スモークによって重要な射線を確実に切っていることには、高い戦術性を感じさせる。

CAG_2F_Kaigi_Atack

赤で囲ったShokeiとSuzuCが主動隊であり、青で示したロビー階段のAnitunとNラペリングのBlackRayがその動きをカバーしている。Anitunはエレベーターや受付に対するロックが行うことができ、加えて主動隊の詰めをサポートできる。屋上にいるgatoradaはメイン階段からのリテイク、そして証券取引前からスモークを突っ切ってリテイクする動きを咎めることが可能だ。

主動隊が会議室だけに専念できる状態が整えられている。アプローチの狙いそのものは尖っているが、そこには確かな知性がある。戦術がある。

SMOKEのガスグレネードの位置を見ても、FAVはロビー階段からの詰めを警戒しており、会議室にエントリーしていく動きは予想外だったのだろう。その後は受付を守る防衛に対しても、ロビー階段とVIPラウンジから二人で挟みこむようにすることで、確実にキルを奪い取っている。

 

YING、DOKKAEBI、LION、GRIDLOCKなど尖ったオペレーターで構成された攻めは、一見ただの“ゴリ押し”だ。しかし、以前までのCAGの傾向を考えると、この“ゴリ押し”は重要な意味を持つ。

幅が広がったのだ。「合理的であり過ぎるがゆえに、行動が縛られる」チームではなくなった。

それはAnitun選手が使うASHの“1の動き”にも明確に表れている。他のラウンドで見せたスピード感を意識した詰めは確実性には劣る。しかし、FAVの想定を越えることに成功している。そして上記の“ゴリ押し”であっても、スモークやGRIDLOCKのトラックススティンガーの使い方には確かな知性が感じられる。CAGが攻撃の幅を広げた中で、合理性を発揮するようになったことを表す印象的なラウンドだ。

 

CAGは変わったのかもしれない。

「合理性を追求するがゆえに自らの幅を狭めてしまうチーム」から「戦術の幅を広げた中で合理性を発揮するチーム」へ。

攻撃における選択肢の増加は、防衛において発揮されている柔軟性と対応力を、攻撃でも発揮できる可能性を示している。

② 莫大なリスクを背負う意思。FAVのリスク選択力。

CAGは柔軟で手札が多く、対応力に優れる防衛が特徴のチームだ。その多様さゆえに、日本国内のあらゆるチームが回答を提示できていない。大きなリスクを避けて合理的にリスクを取る攻めを続けても、CAGの防衛スタイルに対して優位に立つことはできない。ここ最近のありとあらゆる国内大会の様子を見た結果、理解させられる事実だ。

それは、CAG防衛が大きなリスクを選択する意思があり、そのリスクを軽減する工夫を幾重にも行っていることの表われでもあるように思う。
乗り換えるように次々と別の戦術を用いることはその一環だろう。

確実性を上げて、合理的に巨大なリスクを取ってくるCAGに対して、攻め側は「同等以上の」「巨大なリスクを」「合理的に」選択しなくてはいけない。そうしなくては上回ることはできないのだ。

その思考を通して試合を見ると、FAVの攻めには非常に重要な意味が生まれてくる。

次に示すのは8ラウンド目、CAGの地下防衛に対するFAVの攻め。ラウンド不利を背負ったFAVが取った選択肢は、突然のハッチドロップによる防衛拠点へのラッシュだった。これはひどく強引な攻めであるが、確かな合理性に基づいた行動だと断言できる。

▲人数不利とMAP占有率の不利、時間的リソースを失ったFAVのリスク選択。

地下攻めにおける正攻法の戦術/合理的な戦術とは、1階を制圧して次に地下サーバーを制圧し、そしてプラントに入る。そういったものだろう。

しかし、このラウンドのFAVにとって、その“正攻法の戦術”は合理的とはなり得ない。

なぜなら、この作戦を結構する時点で人数不利1、地下攻めにも関わらず取れているのは2階のみ、残り時間は50秒程度という状況だったからである。つまり、MAP的有利を取られている上に人的・時間的リソースも限られていたと言える。その状態で正統な戦術にこだわるというのは、良い選択とは言えない。

リソースが豊富にある状態では高い合理性を持つ戦術も、リソースが限られた状況では莫大なリスクとなるのだ。FAVの選択した“強引さ”は巨大なリスクを伴うが、彼らが直面していた状況においては“どんな合理的戦術よりもリスクが少なかった”そう言える。

 

結果的にはCAGのラウンド勝利となった。しかし、状況に応じて巨大なリスクを背負える意思を私は称賛したい。正確に現状を分析してリスク比較を行い、必要なリスクを取っていけるチーム。日本にはそういったチームはいまだ少ない。その視点においてFAVは最高峰、いや、日本最強のチームだろう。

さて、このラウンドはCAGの巧みな対応にも触れなければならない。

MAPに広く展開するCAG防衛の隙を突く形にもなり、確実に刺さっていたFAVの攻めが崩壊した理由。それはCAGのチーム連携と個々の判断力の高さにある。
特にSuzuC、BlackRayの2人は重要な役割を果たした。

 

まずはSuzuCの立ち回りについて書こう。FAVが全リソースを使ってラッシュを仕掛けたことにより、防衛拠点の2人のうち1人はキルされ、SuzuC SMOKEは瞬間的に圧倒的人数不利の状態にあった。疑似的に1on4になっている状態で、現地の人員に求められる行動とは何か。

それは「できる限り時間を稼いで味方の応援を待つこと。できればその中でキルを奪って不利を軽減すること」だろう。無理に撃ち合って無駄死にすることではない。そう考えると、SuzuCが取った伏せ待ちという行動とその場所の選択は完璧な立ち回りの一つだ。

ラッシュを仕掛ける攻撃側がまず見ないであろう位置で待ち、イージーキルを発生させている。さらにメイン階段のBlackRay VALKYRIEと瞬間的にクロスが成立していることも巧みな点だ。

この後、タイミングを合わせた包囲逆ラッシュでCAGは優位を奪い取ったが、その段階でFAVが4人残っていたら勝敗は違ったかもしれない。それくらい重要な1キル、重要な立ち回りだったと感じている。

 

そしてBlackRayはプランターを含めて2キルするという大きな成果を上げている。勝敗を決定づけるリテイクではあったが、真に優れているのはその後だろう。

殲滅の選択肢しか残されていないFAVに対して、リテイク完了後に再びメイン階段を上がった。CAGの確実な勝利を決定づけたすばらしい判断だろう。

勝つために的確な判断を瞬間的に下せるCAGのシージセンスには驚かされるばかりだ。

③ 積極的なリスク選択が無意識に積み重なり、FAVのさらなる挑戦を可能にする。

FAVの“選択力”が効果を発揮した象徴的なラウンドの一つを紹介しよう。

ラウンドスコア5-5の11ラウンド目。勝利した方がマッチポイントに到達する重要なラウンド。防衛拠点は地下防衛。FAVはサーバー遊撃を排除することに成功し、4-3の人数有利を獲得している。

しかしながら、テルミットを失っていてサーバーの補強壁を割ることができず、残り時間は25秒を切っている。総合的にはFAVが不利だと言えるだろう。普通なら監視室(Aボム)の奥に走りこんでの無理矢理なプラント、もしくは殲滅の選択肢しかない。

そう“普通なら”である。FAVの取った選択は違った。

▲FAVの非合理的な設置ポジション。今までのラッシュや殲滅アプローチが可能性を生んだ。

11ラウンドに至るまで、FAVはラッシュや殲滅をくり返し選択し続けてきた。それは攻防問わずだ。それは対応されてしまうラウンドも招いたが、CAGの無意識に「チーム全体での詰め」を植え付けることに成功していただろう。それがAボム入り口直近でのプラント成立という事態に繋がった。

 

プラント成立を助けたのはTaipon JACKALの赤廊下への詰め。これは無意識に「チーム全体での詰め」を想定していたCAGに、殲滅アプローチだと誤認させることに成功した。

 

例えばこれが序盤のラウンドだったとしたら、あのプラント位置は成立しなかっただろう。CAGに容易く対応された可能性は高いのではないか。スモークで射線を塞いでいるとはいえ、設置位置としては相当に無理がある。単独で赤廊下に突っ込む動きも、チームプレイとしては非難されるような類のものかもしれない。

 

しかしこれまでの積み重ねが、この選択を「通用する戦術」に押し上げた。ラウンド中におけるCAGの不自然な静止。あたかもプラントを想定していないかのような動きがそれを表している。FAVが試合を通してリスクを背負うことを避けていたら、この勝利は成り立たなかったはずだ。

 

シージに限らず、FPSに限らず、あらゆる勝負事においてリスクは“取るもの”だ。“選ぶもの“だ。“避けるもの”ではない。リスクを避け続けることはかえって莫大なリスクになり得るし、逆にこのラウンドのように大きなリスクを取った結果の失敗が、後のリスク選択を助けることもある。FAVは自ら積極的にリスクを取る意思があり、その積み重ねは長期的な影響を生み出している。

それによって、日本最強CAGに敗北を味あわせる寸前まで到達した。銀行が引き分けに終わったのは、本当に細かい部分によるものだった。

その事実を多くの日本チームはどう捉えるのか。FAVの選択をどう捉えるのか。あなたはFAVの「リスクの背負い方」をどう考える?

おわりに

リスク選択において日本最強のチームと言えるFAV。そのリスクを背負う覚悟は、単独首位CAGを撃破寸前まで追い詰めた。成長を続け、日本随一と言えるまでになったFAVの“選択力”はAPACに手を届かせることができるだろうか。

そしてCAG。今までの正攻法戦術と新しく見せた戦術、その両方を組み合わせて使うことでCAGは格段に強くなるだろう。それが世界のどこまで届くのか。CAGの強さは世界に向いている、意識は世界に向いている。

(文:Fuji3/編集:工藤エイム)

 

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