天賦の才と常勝の精神で世界をめざす
きのこゲンジは、3歳からFPSをはじめ14歳で『Apex Legends』のプロプレイヤーになった。物心もつかぬ幼少の頃からゲーミングPCで『カウンターストライク オンライン』(※1)をはじめ、数々のFPS・TPSタイトルで驚異的な戦績を残している。
彼について「中学2年生でプロになり、Apex Legendsで5400ダメージを叩き出すプレイーがいる」と聞いたのが、約1か月前のことである。驚きを隠せぬまま本人にコンタクトを取り、天才FPSプレイヤーが住む北海道へと向かった。どんな人物なのか想像もつかなかったが、待ち合わせ場所で編集部を待っていたのは、至って普通の中学生らしい少年だった。

この日は、きのこゲンジと彼のお父さんにもきていただき、インタビューを敢行。そんな彼がこれまでどんなゲーム遍歴を辿ったのか、プロプレイヤーとしての活動、そして今後の目標を語ってもらった。その前に、彼のこれまでの戦績を紹介しておこう。
きのこゲンジ10年間の戦歴
現在は、大阪に拠点を置くesportsカフェ‟E–Sports Cafe Academia”が運営母体のプロゲーミングチーム‟Team Selector”に所属している。このチームには、世界的なモニターブランドのBenQ、スウェーデンのesports機器メーカーXtrfy(エクストリファイ)がスポンサードしており、きのこゲンジも機材提供を受けている。
ちなみに、きのこゲンジと言う名前の由来は、小さな頃から大切にしている『スーパーマリオ』の‟1Upキノコのぬいぐるみ”で、現在もPCデスクに飾っているようだ。
西暦(年齢) | 戦績・功績 |
2008(3歳) | 『カウンターストライク: オンライン』(※1)を始める |
2010(5歳) | 上記のタイトルでチート扱いされるほどのエイム力を身につける |
2012(7歳) | 『機動戦士ガンダムオンライン』をプレイ開始 |
2015(10歳) | 同タイトル、フランチェスカサーバー日本1位 |
2016(11歳) | 『オーバーウォッチ』をプレイ。メインキャラクターは、ゲンジ。 |
2017(12歳) | トップ500ランクイン。4200レート到達 |
2019
(13歳8ヶ月) |
『Apex Legends』5462ダメージ記録。オクタンのキル数世界1位。韓国チームのスクリムに参戦。 |
※1『カウンターストライク: オンライン』は現在サービスが終了しています。
日本から世界のesportsの舞台へ

――本日は、お二人でお越しくださりありがとうございます。多くのゲームで凄まじい成績を残していらっしゃいますが、これまでにインタビューを受けた経験や顔出しをする機会はありましたか?
きのこゲンジ 全く初めてです。顔出しもです。中学生ということも公表していないので、初めてゲームを一緒にする人と話すと僕の声に驚かれたりします。
――きのこゲンジさんは、『オーバーウォッチ』では有名なプレイヤーですよね。かなりのレーティングだと聞いています。
きのこゲンジ 正確な順位までは分かりませんが、‟Overbuff”というサイトのレート的には上位プレイヤーと同じぐらいでした。最高レートは、4200以上ありました。
――先日少しご一緒させていただきましたが、きのこゲンジさんのレートで敵とマッチングするので、相手が強すぎました(笑)
きのこゲンジ 相当やり込んだ人たちとマッチングしますから。でも、そんなに強くはなかった気がします。このレート帯にいると普通くらいです(笑)
――いまやトッププレイヤーですが、ゲームはいつ頃から始めたんですか?
きのこゲンジ 3歳ごろにお父さんがPCでゲームをしているのを見ていて、自分もやってみたいと思ったのがきっかけです。
ゲンジ父 その時は、『ヒーローズ インザ スカイ』という航空機系のタイトルをやっていました。あとは、『カウンターストライク オンライン』(以下『CS:O』)ですね。
私のひざの上で見ていたんですが、やりたいと言い出して、個人的な部屋を作って練習させました。でも、一切プレイ方法教えていないのに自分でやりだしたんですよ。操作から攻撃まで全部見ながら覚えていたみたいです。
――3歳からPCゲームをプレイしていたのには驚きました。Switchやプレイステーション4などの家庭用ゲーム機はいかがですか?
きのこゲンジ 最初からPCでした(笑)
ゲンジ父 WiiUやプレイステーションもプレイさせたことはあるんですが……。
きのこゲンジ コントローラーだと、友達にボコボコにやられてやめちゃいました。
――その年齢だと周りにPCでゲームをプレイしている人も少ないと思います。
きのこゲンジ 同年代の子はいないですね。一緒にプレイしているパーティの中には、一回りも二回りも年上の方がいらっしゃったりします。
――中学生にして、大人に交じってプレイされているんですね。『CS: O』の次にプレイしたゲームはなんですか?
きのこゲンジ 動画も投稿しているのですが、TPSの『機動戦士ガンダム オンライン』です。その次が『オーバーウォッチ』、『H1Z1』、『PUBG』という順番で、いまは『Apex Legends』をプレイしています。
――お父さん的には、3歳からゲームを始めさせることに抵抗はなかったのでしょうか?
ゲンジ父 全くなかったですね、自分が好きだったのもありますけど。最初のうちは野球やサッカーをやらせたいという気持ちもあってやらせはしたんですが、長続きしませんでした。
きのこゲンジ その頃の記憶はないですが、マウスを握ってキーボードを叩いていたみたいです(笑)

――実力が開花したと感じるタイトルでは、どれくらいのレベルに到達したのでしょうか?
きのこゲンジ 『CS:O』にはレベルとかはないんですが、‟スナイパー戦”を1対7で勝ちました。5、6歳だったと思います。
――5、6歳ですか(笑)完全に英才教育の効果が表れてますね。
ゲンジ父 部屋に入ると、キック(強制退出)されるんですよ。チート扱いされちゃって、マッチできなくなったこともありましたね。それで『ガンダム オンライン』に移りました。‟局地戦”という、いわゆるランク戦があるんですが、毎週プレイして上位に入ったり、日本1位にまでなっていました。
きのこゲンジ めちゃめちゃプレイしました(笑)学校から帰ってきて寝るまでやってました。この時の記憶は、なんとなくあります。
――お父さんもいっしょにプレイされているんですか?
ゲンジ父 この頃すでに勝てないと分かっちゃって引退しました。全く歯が立たなくて、父親の面目がなかったです(笑)
――ゲームならではのことですよね。一般的なスポーツでは、大人にはフィジカルで勝ち目がないですし。
小さいころからトッププレイヤーだった訳ですが、親御さんから見て、この子はすごいと思われた瞬間もあったのではないでしょうか。
ゲンジ父 『CS: O』のときには、その片鱗があったのかなと思います。『ガンダム オンライン』で毎週のように日本1位になっていて、これは伸ばしていくしかないと感じました。『オーバーウォッチ』でも、ランクが上がってプロと対戦しても引けを取らず、レートを上げてますし、そのことが確信に繋がっていきました。
――きのこゲンジさんは、絶対に日本1位になるといった意識を持ってプレイされていたんでしょうか。
きのこゲンジ どうせやるなら、そうなりたいと思いながらプレイしていました。
ゲンジ父 小学校の頃は外で遊んだりしていましたが、中学生になると、プロ意識が芽生えてきたんじゃないかなと。
きのこゲンジ 家に帰ってきたら、まずパソコンを起動して、寝るまでずっとプレイしてます(笑)プロに興味を持ったのは、『オーバーウォッチ』のプロリーグを見ていて、プロの人たちが楽しそうにプレイしていて、そこに入ってみたいと思ったからです。元プロのKabajiさん、DeToNatorのStylishNoobさんが好きでした。
ゲンジ父 レート帯が同じだったから、StylishNoobさんとは結構マッチングしてたよね?
きのこゲンジ めっちゃ強かったですね。StylishNoobさんは本当に強かったです。
――この時は、おいくつだったんですか?
きのこゲンジ 小5か小6のころでした。友だちにプロゲーマーがいる、と教えてもらって気づきました。
ゲンジ父 一回、DeToNatorさんのサーバーに入ったことあったよね?
きのこゲンジ 覚えてないです……。
ゲンジ父 以前、DeToNatorにいらっしゃった方で、ゲンジの練習したい、ということで一緒にプレイしていましたね。
きのこゲンジ 思い出しました(笑)でも、誰がいたかは記憶が曖昧です。

――当時からトッププレイヤーとしのぎを削ってたんですね。憧れのプレイヤーはいらっしゃいますか?
きのこゲンジ ダントツでStylishNoobさんです!プレイはもちろん、お話も面白くて、見ていて一番楽しいです。投稿されている動画、Twitchも欠かさずチェックしています。
StylishNoobさんを知ったのは、友達が話題にしていて配信を見たときです。ちょうど『PUBG』をプレイしていた頃で、いっしょにゲームをしていた年上の方から教えてもらいました。それ以来、ずっと好きです。
――StylishNoobさんと実際に会う機会があったら、どうしますか?
きのこゲンジ 夢に出てくるくらいなので、もう半端じゃないくらい嬉しいです!写真もぜひ一緒に撮りたいです!
――年上の方とゲームをすることが多いからか、お話をしていて中学生とは思えない礼儀正しさを感じました。
きのこゲンジ 言葉づかいとかは気を付けてます。
ゲンジ父 すごく注意はしていました。でも、周りの方々もいい人ばかりで、ネットのルールとかを教えてもらっていました。本当に周りが大人ばかりなので心配なところはありますが……。Discordにも聞き耳は立てていましたし(笑)
きのこゲンジ ネットのマナーも学べたし、人に対する礼儀も身につけることが出来たのは、ゲームをやっていてよかった点だと思います。
――それだけゲームが上手くて配信もしていると、学校の友達から何か言われませんか?環境的にも親御さんは心配されることも多いのではないでしょうか。
きのこゲンジ YouTubeの配信をやっていることを話した友達が1人だけいて、その子から伝わって『オーバーウォッチ』をはじめた友達がいます、PS4版でしたが。配信していることを知っている人は少ないですし、あまり言ってほしくないです。
ゲンジ父 同年代の子は、ネットリテラシーを知らないこともあって、本名とか学校名を言われちゃうのが怖いですね。
ゲームに関しては、私自身が趣味でしていたこともあるので、否定的な意見は持ってません。野球やサッカー、将棋を小さな頃からやってプロになった人と、ゲームのプロは何が違うのか。この子が選んだのがゲームだった、それだけだと思います。
――練習は何時間くらいしますか?やはり、内容の振り返りもされるのでしょうか。
きのこゲンジ 毎日5、6時間は練習しています。疲れているときは、2~3時間とかにします。でも、振り返りはあんまりしないですね、シアターモードを見たりもしないですし。とにかくやって場数を踏んでいきます。あまりにもひどい内容だったら、そこは次から直していますが。あとは、Shroudさんとか強いプレイヤーの動きをみて勉強したりしています。
ゲンジ父 エイムの練習も全くしないんですよね。マウス、マウスパッドを新調しても、少し設定をいじるだけでピッタリとエイムを合わせるんですよ。いまここに、いつも使っているのものと異なるデバイスがあっても、すぐに調整できると思います。エイムの練習方法を質問されることもあるんですが、返答に困っています。
きのこゲンジ 違和感があるところを見つけて少し修正すれば、いつも通りプレイできます。
――絶対音感に通じる感覚を持っていらっしゃるんですね。最近は『フォートナイト』を再開したばかりで、20キルしてビクトリーロイヤルされたとか。
(取材当日、ちょうど‟フォートナイト ワールドカップ”のオンライン決勝があり、すでに出場権を獲得していた)
きのこゲンジ それでも、アリーナモードの上位プレイヤーには建築で負けます。今日もオンラインの決勝なんですが、パートナーの方にここまでキャリーして貰ってました。先日、40位くらいに入っていた方とデュオを組んでいるんですが、足を引っ張っているなと感じています。エイムの感覚は、FPSからTPSに切り替えても気にならないんですけど。
――ここまでほとんどFPSやTPSタイトルでしたが、他のジャンルのゲームはどうでしょうか。
きのこゲンジ MOBA、RTSなどは得意じゃないんですが、シューティング以外もやれないことはないです。友達に誘われて、Blizzardのゲームで『ヒーロー オブ ザ ストーム』もプレイしました。教えてもらいながらそこそこ出来たし楽しかったです。
――最近は『Apex Legends』を配信されてますが、YouTubeへの投稿は数年前からされてますよね。
きのこゲンジ 始めたのは小学4年生か5年生のときです。
ゲンジ父 いいプレイをするので、なんとなく勧めてみました。徐々に見てもらえるようになり、今でも交流があるような一緒にゲームをする仲間もできました。
きのこゲンジ 『Apex Legends』は面白そうだなと思ってやってみたら、自分にピッタリのゲームで、バトロワの中でも一番やりやすく感じました。
――配信を拝見して、きのこゲンジさんの上手さに驚きました。これまでの最高ダメージも教えてください。
きのこゲンジ 最高ダメージは5400くらいです。PS4では同程度のダメージを出した人がいるみたいですが、PCでは聞いたことないです。動画も投稿したかったんですが、ShadowPlayの録画時間を数分だけオーバーしちゃって、出来ませんでした。最近は、韓国のスクリムサーバーに参加していました。でも、今は活動をやめてしまったみたいです。
参加チームのほとんどが韓国チームで、‟Team Quadro”という『PUBG』で有名なチームがいたのは覚えています。個人、個人が強すぎて泣きそうになりました。撃ち負けることも多く、連携力も高くて、長年一緒にやっていたメンバーでやっているのか、全く歯が立たなかったです。それでも、何度か勝った時の嬉しさはすごかったです。


――所属されているチームのメンバーと出場されたのでしょうか?また、チームに所属したことで、意識の変化などはありましたか?
きのこゲンジ まだ仮の状態でパーティを組んでいて、随時メンバー募集中です。
ゲンジ父 チームの運営母体の企業さんが大阪にあって、これから本格的に活動する予定です。『Apex Legends』の部門は、この子がリーダーとして所属していて、メンバーの選考にも携わっています。なので、色々な人とパーティを組んで試行錯誤している途中です。
きのこゲンジ 日本のesportsシーンも少しずつ盛り上がってきたのを感じてますし、大会の参加を目指してより練習を頑張るようになりました。オフライン大会があったらぜひ参加したいです。
――7月には、チーム‟Selector”のオープニングイベントも参加されるとのことで、オフラインイベントに対しても意欲的なんですね。緊張したりしませんか?
きのこゲンジ 大会に出ると緊張しますが、1試合やればほぐれるので大丈夫ですね。大会ステージのような場所で勝つ感覚を味わいたいです。あと、ストリーマーになって色んな人に見てもらいたい、自分のプレイをもっと多くの人に見てほしい、という気持ちもあります。ゲーム配信をやってて楽しいですし。
――プロだけではなく、ストリーマーでも活躍していきたいという事ですね。向上心を持っていらっしゃるように感じました。
きのこゲンジ 同じパーティメンバーでも、自分よりキル数とか戦績がいい人がいると悔しくなります。そういう時は、意地でも1位になりにいきます(笑)
――ご一緒させてもらった際、動きが早すぎてついていけませんでした(笑)後半なんて、武器を持っている意味すら分からなくなるほどでしたよ。
ゲンジ父 最初にゲームを教えた時に、何度やられてもいいから突っ込んでいけと言っていました。やられるまでにキルした人数を数えて、それを伸ばしていけと。そうすれば、最後には自分が一番になっていると教え込みました。‟芋る”ことは絶対に許さなかったです(笑)
きのこゲンジ 『PUBG』なんかは慎重にいかないと勝てないので、バランスも大切だと思います(笑)初期はキルし放題でしたが、環境が変わって冷静に戦わないと勝てなくなりました。
ゲンジ父 そうやって教育したからか、10秒と待ってられないんです。10秒止まったら死んでしまうような感じです。ゲームを始めたばかりの頃は、怒鳴りながら指導してました。今では、私から言うことすら無くなりましたが……(笑)

――キルを狙う立ち回りはお父さん譲りなんですね。5400超えのダメージは、まさに教育の賜物だと思います。
ゲンジ父 エイムだけじゃなく、どんなゲームでも瞬時に戦況を把握して自分の立ち回りを考えられるのは、私から見てもすごいと感じます。その強さが分かるのは、1v3だったり追い詰められた時です。急に喋らなくなったと思ったら、オブジェクトを使って上手く敵を翻弄しながら状況を覆したりするので、本当に驚きます。
きのこゲンジ 味方の声以外聞こえなくなって、気づいたら倒していてゲームが終わってた、ということもありました。こうやって勝てるようになったのは、攻めるときと引くときの駆け引きの重要さをお父さんから教えてもらったからだと思います。指導されている時は、怖かったですが(笑)
――これからの成長が楽しみですね。最後に、今後の目標をお伺いさせてください。
きのこゲンジ やっぱり世界一になることです。Ninjaさんみたいに世界で有名になりたいです。いま手にしているチャンスを活かして、今後も頑張ります。
きのこゲンジ動画集
きのこゲンジ:Twitter
▼ ‟オクタン”世界1位 32キル
▼『Apex Legends』Montage
▼ 25キル、5151ダメージ記録
※きのこゲンジ選手は、親権者の同意のもと記事内で紹介したゲームをプレイしています。
※ファミ通AppVSの掲載基準に則り、上記のタイトルを記事で掲載しております。