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【ゲームキャスターリレーインタビュー】番外編:平岩康佑「esportsイベント全体のレベルを上げることが、業界全体の目標になる」

ゲームキャスターひとりひとりに、キャリアの歩み、ゲームキャスターという仕事について、そしてesportsについての意見を聞く企画、ゲームキャスターリレーインタビュー。今回は番外編として、朝日放送を退社し、esportsに特化した事務所‟ODYSSEY(オデッセイ)”を立ち上げたことで話題となった、平岩康佑氏にお話をうかがった。

平岩康佑氏は、元朝日放送テレビのアナウンサーで、プロ野球や高校野球、Jリーグなどのスポーツ実況を長年担当。2017年には高校野球の実況が評価され、“ANNアノンシスト賞優秀賞”を受賞するほどの名実況者だ。その後、2018年6月15日に、朝日放送を退社し、esportsキャスターへと転身。さらに、その2日後となる6月17日にはesports実況業務に特化した株式会社ODYSSEY(オデッセイ)を設立するなど、まさにesportsキャスター界期待の超大型新人というわけだ。

これまでのおもな実績としては、KONAMIの野球ゲームの総合大会“パワプロチャンピオンシップ2017”や、大型esportsイベント“RAGE 2018 Summer”内の『シャドウバース』部門、同タイトルの専門番組“シャドバ道場”にて、実況を務めている。

そんな平岩氏に、アナウンサーという仕事について、そしてesportsキャスターとしての活動についてなど、さまざまな質問を行った。ゲームのことだけでなく、“実況”という技術について興味深い話が盛りだくさんなので、ぜひ最後まで読んでほしい。

平岩康佑Twitter:https://twitter.com/kouhiraiwa777

ODYSSEY公式サイト: https://www.odyssey-esports.com/

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平岩康佑 プロフィール
1987年、東京都品川区生まれ。中学時代からFPSを中心とした、海外のテレビゲーム(いわゆる、洋ゲー)にのめり込む。大学在学中にアメリカワシントン州の大学に編入、ビジネスを専攻し、経営学を学ぶ。その後、単身バックパッカーとして世界を1周。卒業後は朝日放送にアナウンサーとして入社、実況アナウンサーとしてプロ野球やJリーグ、箱根駅伝などの実況を担当。報道番組や情報バラエティにも出演、ラジオのパーソナリティなども務めた。

洋ゲー好きの平岩氏が、アナウンサーになった経緯

――最初に平岩さんのゲーマーぶりをお聞きしたいのですが、昔からゲームがお好きだったのでしょうか?

平岩 大好きでした。子どものころ、家にファミコンがあって、弟といっしょに『スーパーマリオブラザーズ2』をよくやっていました。そこからアナウンサーになるまでも、なってからも、ゲームは遊び続けていましたよ。

――よく遊ばれていたゲームは何ですか?

平岩 洋ゲーが多かったですね。中学生~高校生のころは、おもにFPSをプレイしていました。あと、映画『スターウォーズ』がすごく好きだったので、いろいろなゲームを遊びました。総合プレイ時間で言えば、いちばん長いと思います。非現実的な世界に入るのが好きなんですよ。たとえば『グランド・セフト・オート』シリーズで、旅行気分を味わいながらドライブしてみたり。あ、ちゃんと交通ルールとかも守ってですよ(笑)。

――マニアックな遊びかたですね(笑)。たしかに、FPSは銃を撃つ、という部分でかなり非現実的の魅力があります。

平岩 あと、VRタイトルも大好きです。VRが出回ってすぐ、“Oculus Rift”を購入し、“Unity”(マルチプラットフォームに対応するゲームエンジンのひとつ)の勉強をして、アセットを使い自分でVRソフトを作って遊んだりしていましたよ(笑)。

――それはすごい! ちなみに答えるのが難しいとは思いますが、いちばん好きなゲームはありますか?

平岩 なるほど、たしかに難しい質問ですね……。うーん……、いちばんを決めるのは100年くらい掛かりそうですが、物心付いていちばん遊びたかったゲームは、『スーパードンキーコング』でした。あそこから、急激にグラフィックが進化したと思っていて、そのクオリティに惹かれた印象があります。もちろん、小学生のころは普通に『ドラゴンクエスト』シリーズとか遊んでいましたよ。

――洋ゲーが好きになったのはいつごろですか?

平岩 洋ゲーが好きになったのは、中学生のころですね。当時は家庭用ゲーム機に厳しいリージョンコード(販売されているハードとゲームソフトの国が、どちらも同一でないと起動できない制御のこと)があったので、わざわざアメリカのハードを買って遊んだりしていました。海外旅行に行った際も、観光とか行かずにゲームショップを巡っては、海外版のゲームを買いあさっていましたよ。

いまでこそ日本でも海外でも発売されるゲームばかりですが、当時は海外でしか遊べないものが非情に多かったですから。みんなが『ポケットモンスター』とか遊んでいるときに初代『レインボーシックス』とかをやっていたせいで、人とは話が合わなかったですね……(笑)。

――(笑)。平岩さんが超が付くゲーマーだと分かったところで、まずはアナウンサーになられた経緯を教えてください。

平岩 僕は人前で話すことや、人前に出るのが大好きだったので、昔からアナウンサーをやってみたいと思っていました。ただ、ゲームも好きだったので、ゲームを仕事にしたいとも考えていたんですね。なぜ、僕が最終的に朝日放送に入社したかと言いますと、就職活動が終わった瞬間に、朝日放送と、任天堂の2社から内定を貰っていたんですよ。

――え! 任天堂って、まさに『スーパーマリオブラザーズ』などでおなじみの……!?

平岩 そうなんです、人生のなかでもいちばんの究極の選択でした。先に任天堂から内定を貰っていて、内定者懇談会のようなものが開かれたんですね。そこで、任天堂の人事部の方と、30人ぐらいの内定者たち全員で、雑談をしてみようみたいなことがあったんですよ。最初は人事の方が司会をされていたのですが、気が付いたら、僕がその懇談会の司会のような立場でお話を広げていたんです。それがもう楽しくて楽しくて、その瞬間に「よし、朝日放送に行こう」と、決断しました。……任天堂さんの社内で(笑)。

――任天堂のおかげであると(笑)。任天堂を受けられたのは、やはりゲームが好きだったからですか?

平岩 当時、僕は『コール オブ デューティ』シリーズにハマっていました。現実的な世界で実銃を撃つ戦争モノのゲームで、任天堂の世界観とは真逆ですよね(笑)。実際の面接でも同じ話をしましたが、普通のゲームって、ゲームのなかで遊びが完結しているんですよ。

でも、任天堂のゲームは真逆で、当時流行していたWiiの『Wii Fit』であったりですとか、ゲームと生活が一体化しているんです。「世の中をゲームで変えてくれるのは、任天堂なんだ」と思い、面接を受けに行きました。と言っても、ゲームのなかで遊びが完結しているゲームも、もちろん好きですよ。

――なるほど。そこから朝日放送に入社されたと。最初どんな仕事していましたか?

平岩 朝の情報番組に出たりしながら、スポーツ実況の修行をしていました。それまで実況の訓練もしていないので、入っていきなりスポーツ実況というのは、さすがに担当できないんです。会社によって違うとは思いますが、朝日放送はスポーツ実況をやりたい、と宣言したアナウンサーにスポーツ実況を任されました。そして数年修行し、3年目の夏に開催された、全国高等学校野球選手権大会(甲子園)が僕のデビューとなりました。

――修行、というのはどういったことされていたのでしょうか。

平岩 アマチュア野球の試合に行って、客席で大声を出して生実況するんですよ。

――それをおひとりで?

平岩 先輩が付いてきてくれたら、解説者役とかをやってくれます。ひとりで行く場合は、実況を録音し、先輩たちに聞いてもらって、ここがダメだとかレクチャーを受けるんです。いまならひとりで行って実況しても、何も恥じることはないのですが、当時は実況が下手で、しかも野球をよく知らない部分もあり、「打ちましたレフトフライ! ……あ、ライトフライ!」みたいなことばかり言ってて(笑)。

しかも、ほかのお客さんもいるので、間違えると僕のことをチラッと見てくるわけですよ、「コイツなにやってんだ?」みたいな目で(笑)。そもそも勝手に実況してる、ヘンな人なわけですから「うるさい」、「ヘタクソ」とかよく言われていました。

――その修行のなかで、印象深いエピソードなどはありますか?

平岩 デビュー寸前のお話ですが、いつものように学生野球の試合を勝手に実況していたんですよ。そしたら、出場している選手のお母さんが話かけてきて、“私の息子が試合に出てる。この試合は負けるだろうけども、息子にとっては、最後の試合になると思う。だから、撮影しているビデオのなかに、あなたの実況を入れてほしい”って、お願いされたことがあったんです。

そこで初めて、こういう人たちのために実況をしなくてはならないと実感しました。それまでは、仕事のひとつとして3年目の夏までに、甲子園の実況ができるようになる必要がある、という業務の一環だったわけです。そこで高校野球の重みや、少年たちの思いのようなものを痛感し、僕の心に、実況をしなくてはならないという使命感が産まれました。

――いいお話ですね! ちなみ、スポーツ実況をされてる皆さんは、基本的にそういう訓練方法を取っているのでしょうか?

平岩 朝日放送では、基本的にそうでした。ただ、現場に行くのは基本的に野球くらいだと思います。たとえばサッカーの試合は、テレビを見ながらでも練習できます。なぜかと言うと、実況席とテレビで見る景色が、ほとんどいっしょだからです。

ただし、野球はピッチャーの背中越しがメインの映像で、バッターの成績などに応じて画面がどんどん転換していきます。野球の実況席って、野球場の全体が見えるよう、上から見てるんですよ。そうすると、ランナーの動きも見えるし、ベンチの様子やネクストバッターサークルで待機してる選手も見えます。その全体を見て、独特の視点から実況しなくてはならないので、野球の実況練習は、誰しもが野球場に行くと思いますよ。

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esportsキャスターとして、独立へ

――そんな平岩さんが、なぜesportsキャスターになられたのかお聞かせください。初のesports実況は、“RAGE”が初仕事でしたよね。どういった経緯で“RAGE”への出演が決定したのでしょうか?

平岩 “RAGE”の運営担当であるCyberZに、知り合いがいまして。その方が、SNSで“RAGE”のことを紹介していたんですよ。それを見た瞬間に、お話を聞きたいと思い、自分から連絡したんです。そこで、ゲームの実況をプロでやっている人は少ないというお話を聞き、僕からぜひやらせてほしい、とお願いしたのが経緯です。その際は、朝日放送にもお話をし、朝日放送のアナウンサーとして“RAGE”の実況をしました。

――やはり、esportsに興味があったのでお願いした、ということでしょうか?

平岩 その通りです。ゲーム好きとして、ゲームこれまでとは違う路線に乗り始めたことに興味を持っていました。

――そこから独立されて、esportsキャスターになられたわけですが、なぜesportsの実況をしようと思ったのですか?

平岩 “RAGE”で経験したことが、本当に楽しすぎて頭から離れなくなってしまったんです。大好きなゲームを仕事にしていることや、周囲の人とゲームのお話をする機会ですとか。すべてが楽しかったんですよ。あと、esportsが盛り上がっている昨今、esportsキャスターが増えるという予想もあったんです。その流れのなかに、自分が加われないのは、正直イヤでした。

――ゲームの分野で独立するというお話をして、朝日放送の方々はどんな反応だったのでしょうか?

平岩 今年、甲子園は100回大会を迎えるんですよ。その記念すべき大会の実況をする前に独立しちゃうなんて「なんで!?」みたいな反応でした。やはり、本質的にゲームの楽しさを理解している人は朝日放送には少なかったので、まあ普通の反応だと思いますよ。でも、そういった反対を押し切っても、やはりesportsキャスターをやりたかったです。

――なるほど。“RAGE”ではその後、『シャドウバース』の実況を担当していますよね。実際やってみて、苦労しましたか?

平岩 まず『シャドウバース』のことを、とことん勉強しました。プレイ自体は、そもそもアナログで、トレーディングカードゲームの『マジック:ザ・ギャザリング』を10年ほどやっていたので、すんなり入ることができました。それに加えて『シャドウバース』の知識を付けるために、2ヵ月ほどみっちりと遊びました。

勉強自体は、野球実況の際にも勉強していたことですし、サッカーだろうとアメフトだろうと、やるときは勉強するもなので、そういう意味では苦労していないというか、変わりはなかったですね。

――どんなスポーツでも、語れるレベルの知識が必要であると。

平岩 ほかの人の意気込みは聞いたことがないので分かりませんが、おそらく全員そうだと思いますよ。やはりどんなものでも、見ている人はそのスポーツが好きなんです。だから、皆さんが驚くポイントで自分も驚く必要がありますし、自分が感動した場面は、観客も感動するシーンであるべきです。あと解説役の方に、皆さんが驚くようなお話などを引き出すには、そのスポーツに通じてないと質問すらできません。解説役の方はホームランを打ったことがあったとしても、僕たちはホームランを打ったことがなくてもいいんです。観戦のプロであれば、成り立つんです。

――視聴者のなかには、必ず初心者の人もいますよね。そういった人たちに向けては、どういったことを喋るんですか?

平岩 野球中継でも「ストライク3つ取ったら、1アウトです」みたいな基礎ルール解説まではしません。ただ、みんながあやふやなルールは解説します。野球のインフィールドフライ、サッカーならオフサイドなどはしっかり説明すべきだと考えています。あと、盛り上がる場面はしっかりと情報を与えて盛り上げることを心掛けています。

たとえば、エース対4番バッターの対決で「ここまでの対戦成績は、すべて3三振です。ですが打率は3割。そろそろ打つんじゃないですか? しかも打てば逆転ですよ!」というように、気持ちを煽ってあげると、その選手たちを知らない人でも盛り上がれますよね。

あと、甲子園で「春はケガで出場できず、悔しい思いをしましたが、最後の夏に、最高の場面で打席に入ります!」と実況すれば、野球のルールすら知らなくてもその選手のドラマが見えて、感情移入ができますよね。野球のおもしろさと、人間性の部分をアピールすることを使い分けながら、実況します。

――そういったテクニックは、esportsの実況でも使っているのでしょうか?

平岩 もちろんです。ですが、とくに人間的なドラマをアピールしてあげることは、esportsの実況に、まだまだ足りていないなと思っています。もちろん実況者の方々全員のものを聞いているわけではないですが、基本的には、強い人A対強い人Bの対決で、日本一強い人が決まる! というトークになりがちなんですね。この人のココが強い、をとにかく解説し、勝利した人はもっとスゴかった! って感じの流れが基本になってしまっています。

たとえば、プロゲーマーのときど選手ならば、東大に受かっても、人生を賭けてプロゲーマーになった人です。そんな人が、いま世界一を決める大会に挑むのです、ということをしっかりドラマとして解説すべきです。もちろんファンの人は全員知っている事実だとしても、あえて言うことで気持ちも上がります。そうしていく ことで、ルールや映像のおもしろさだけでなく、人間的な魅力でも観戦してくれる人が増えると思うんですよ。

――選手たちのエピソードは、自身で取材されるんですか?

平岩 そうですね。esportsではとくに重要視されていないせいもあってか、取材する機会が少なく、自らお願いしてお話を聞くことが多いです。ちなみに甲子園は、1試合10分だけ全選手に、全メディア合同で取材できるタイミングがあります。そこで、数人で取材に行って各選手たちからお話を集めます。とくに朝日放送は、人間部分に焦点を当てることを重視していたので、そこは自分の力になった大きなポイントだと思っています。

――それが平岩さんの武器のひとつなんですね。esportsキャスターとして、ほかに気を付けていることはありますか?

平岩 たとえば、ラジオで実況する際は起きたことすべてを実況し、選手の顔色から服装まで、すべて伝えるべきだと思っています。ですが、テレビは見たことすべてを喋る必要はありません。そのあいだに、ほかの情報を話すことも可能です。いま思っているのは、esports全体が“喋りすぎ”な傾向にあると思っています。それは、現状のesportsキャスターは、基本的にゲーム実況者などが中心なため、個人配信などで腕を慣らしてひとりで喋るのがうまい人たちが多いです。そのぶん、間を作ることを嫌っていて、無音への恐怖があると思うんです。

でも実況って、じつは黙ってもいいんですよ。たとえば勝負どころでは、僕も黙ることがあります。ぜひ思い返して欲しいのですが、野球やサッカーの実況でも、「ここは黙って見守りましょう」ですとか、シーンとした緊張感のあるシーンもありますよね。もちろん喋り続けるべきゲームもありますが、ゲームによっては黙る勇気も必要だと思うことを心掛けています。

――たしかに、黙るのも大変そうです。ネット配信ですと、喋らないと「仕事しろ!」とか、視聴者からコメントが飛ぶこともありますもんね(笑)。

平岩 コメントはテレビにはなかった要素ですから、おもしろいです。人によるとは思いますが、僕は積極的に読むようにしています。配信後もチェックしたりしていますよ。テレビって、直接の視聴者の反応が見えないんですよ。あるとしたら、ほとんど苦情です。Twitterでエゴサーチしても、「この実況が良かった」、「下手だった」とか、感想としては具体的なことを書いてない場合が多いんです。ただ、コメントだと発言したその都度反応があるので、なるべくチェックして、いろいろな参考にしています。

『シャドウバース』を通じて分かった、スポーツ中継との違い

――『シャドウバース』はカードゲームですので、実況という観点から見ると、つねに動き続けるサッカーやバスケットなどと違い、野球に通じる部分があると思います。これまでの経験が生きた部分はありましたか?

平岩 僕だけがやっていることではないかもしれませんが、プレイヤーの行動に合わせて、こういうことを言おうとつねに考えてやっています。このカードを使ったらこの言葉を言おう、この選択肢ならこう言おう、と予想をたくさん立てておくんです。『シャドウバース』はその間やタイミングが野球に近いので、やりやすいですね。格闘ゲームやFPSですと、やはり流れるような実況が必要ですから。

――解説の方と喋る時間も多く取れるのも、大きな魅力ですよね。

平岩 そうですね。ちなみに、ゲーム外のことを解説者に聞けるのもポイントです。「デッキ構築のコツは何ですか?」みたいなことは要所には入れますが、たまに「運頼みしているとき、必ずする願掛けは何ですか?」、「朝ごはんは何食べましたか?」とか、本当に雑談程度のことなんですよ。でも、ゲームの試合は1日掛けて長い時間やることが多いですから、つねに緊張感を持つのではなく、力を抜くところは抜いて、笑えるようなお話をしたほうが見やすいんです。

――たしかに。とくに“RAGE”は、朝から晩まで試合の連続ですもんね。

平岩 “RAGE”の『シャドウバース』では、声優さんがゲスト解説に来ることもあるので、声優さんに「寝るとき何着てるんですか?」とか、セクハラまがいのことも聞けるんですよ(笑)。そしたら、コメントで“平岩よくやった!”とか言われたりして、視聴者たちとのコミュニケーションも取りやすいですね。ちなみに、全然関係ない話は野球実況でも、皆さんやってますよ。「現役のときの夜遊びはスゴかったんじゃないですか?」みたいな(笑)。

――ああ~、聞いたことがあるかもしれませんね(笑)。

平岩 あと、知識として知っていても解説役の人にあえて質問することもあります。たとえば定石通りではない作戦に挑んだときに、「いまのプレイングはどうして採用したんですか?」みたいなのは、聞くべきなんですよ。実況者というのは、解説役ではないので、作戦については多くは語らないのです。どちらも知識が高いと、専門用語など使いがちになってしまったりですとか、初心者の人は言っている意味が分からなくなってしまいます。ですので、レベルの高い試合が行われていても、あえて目線を下げてあげるのが実況者の役割のひとつだと思っています。

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――そういう点で言えば、『シャドウバース』の解説者であるkuroebiさんとは、最初から息ピッタリの実況解説をしていましたよね。

平岩 とても相性がよかったです。僕はいろいろなインタビューでも、esportsの実況&解説は、どちらも実況も解説もやってしまうのが問題と、よく言っています。それは、プロゲーマーやトッププレイヤーの方が実況と解説を務めたりすることが多いせいで、語りがちになってしまいます。

先ほどいいましたが、実況者は多くは語りません。kuroebiさんは、最初お会いした時点で実況と解説の役割をしっかりと理解していて、自然に役割分担をしてくださって、非常にいい仕事ができました。そういう基本的なことをesportsの実況者と解説者全員ができるようになると、業界全体の注目度などもアップすると思います。

――ほかには、今後、esportsキャスター全体のレベルを上げるには、どういったことが必要だと思いますか?

平岩 起きたことを話すことは、やはり大事です。ゲームのなかでの活躍や、選手の表情や仕草など、すべてを言葉で描写することが、実況者に求められる根幹のスキルなわけですから。練習したい人は、街中を歩いたり電車の風景を見ながら、見たことを言葉にするといいと思います。あとは、担当するゲームについて、視聴者全員が知らない人、という想定で実況をするというのもいいと思います。あと、配信自体も変わるべきですね。

――具体的には、どういった部分ですか?

平岩 よく選手紹介の並び順が適当だったりするのですが、“しっかり並び順を考えて、紹介していったほうが盛り上がるよね”って思うわけです。それは、厳しいテレビの世界で育ってきたからだと思います。そういう演出は、しっかりと味付けするべきです。たとえば優勝が決まる瞬間、「ここまで数々の苦難を乗り越え、ついに〇〇選手が悲願の世界一に輝きました!」といつもより長めに試合終了の実況をしている最中に、本当であれば選手の顔や会場の雰囲気を映しておいて欲しいのですが、放送席が映って、「それはないだろう!ちゃんと実況聞いておいて下さい」と(笑)。それをバックに、配信では優勝者の顔を写したり、優勝のシーンを振り返るシーンなどを挟むのはアリです。ですが、それを言っている最中に、実況席のカメラに画面が切り替わったりするんですよ。それはないだろう! と(笑)。ただ、理由は分かるんです。ディレクション側が、予選のときと同じ流れで仕事をしているからです。

――なるほど。たしかにそういったシーンを見たことがあるかも……。

平岩 テレビのスポーツ中継は、中継ディレクターが存在します。その人がすべて、どのカメラの映像を流すか決めています。一見関係ないように見えますが、その人とアナウンサーは、すごく密接な関係にあります。試合前には打ち合わせもしますし、終わったあとにも「なぜあそこで選手の顔を写さなかったの?」とか、話し合いをするわけです。たとえば優勝した選手にライバルが居たとして、「ライバルの〇〇を下し、ようやく優勝を手にしました」的なことを言いたい場合、しっかりと分かっているディレクターならば、そのライバルの姿も映してくれます。流している映像と、実況がしっかりとマッチしたときに、ようやく最高の中継になるんです。

――まだまだ発展途上な部分もあるので、今後に期待したいです。

平岩 もちろん、いまはそれでいいと思います。現在は配信があるだけ十分なはずです。ただ、今後より良くしていくためには、そういったノウハウが必要だと考えています。とはいえ、カメラ部分に関しては、ゲームによってはすぐ良くなるはずですよ。カードゲーム、格闘ゲームなどの場合、ゲーム内のカメラ自体は基本ひとつですから。これが、『PUBG』などになってくると、カメラが100台あるようなものですからね。選手たちの戦況に応じて、随時カメラを切り替える必要があるので、ゲームの知識が必要になりますから。そこがどんどん、改善されていくことを信じています。

esportsと一般社会

――esportsキャスターとして活動を初めてから、身の回りに変化はありましたか?

平岩 環境はガラリと変わりましたね。まず、身の回りにゲームへのリテラシーが高い人しかいないのは驚きました。テレビ局の人って基本忙しいこともあり、あまりゲームをやる人はいないんですよ。ゲームを説明するのに、時間がかかるんですよ。たとえば『スプラトゥーン』の話題に出すとしても、ゲーム性から対応ハードのことまでイチから説明しなきゃいけないレベルで。ですが、“RAGE”の会場で雑談になったとしても、「何の武器使ってます?」みたいな、軽いおしゃべりすらできるのは、本当に驚きました。

――そもそも世間に、esportsという言葉がしっかり伝わるかどうかも怪しいのが現実ですからね。

KO6_4823_R平岩 上司の方々も、esportsを知らない人が多かったです。なぜ興味がないのかというと、ゲームで遊ぶのが当たり前といういまの世代の人たちではないからです。もちろん盛り上がりそう、収益が大きそうという部分の魅力はニュースなり記事なりで知っている人はいますが、本質的なおもしろさを理解しているかどうかは難しいですね。そういった人たちに知ってもらうこと、そして、昔はゲームをやっていたけど、いまはやっていない。そういう人たちに、魅力を知ってもらうことが課題だと思いますね。

――それは本当に、esportsとしても、我々メディアとしても課題になっていることだと思います。

平岩 今年、総務省と経済産業省が出したesports事業の報告書のなかに、韓国では高齢層へのゲームリテラシーを高める活動などを、国家単位で行っていることが書かれてあって。どういったプランで行ったのか、個人的にすごく気になっています。そのおかげか、韓国では『リーグ・オブ・レジェンド』トップのプロゲーマー、Faker選手の名前を知っている高齢の方も多いと聞きます。ゲームに対する偏見さえなくせば、きっと皆さん遊ばれると思うんですよ。

※リンク:総務省による、eスポーツ産業に関する調査研究 報告書 http://www.soumu.go.jp/main_content/000551535.pdf
※リンク:経済産業省による平成28年度コンテンツ産業強化対策支援事業 報告書 http://www.meti.go.jp/meti_lib/report/H28FY/000848.pdf

チャレンジしたいのは、格闘ゲームの実況

――では、ご自身が設立されたオデッセイについてお聞かせください。事業として、今後キャスターの育成などもされるそうですね。

平岩 はい。何人かの候補を採用し、僕のノウハウを生かしてアナウンサーとして育成しつつ、esportsキャスターとしての大事な部分も伝えていきます。とにかくクオリティが高い実況が、所属アナウンサー全員できることを売りにしていく方針です。

――どういった人を採用される予定ですか?

平岩 アナウンサー経験がある人だけでなく、未経験の人でも採用を考えています。実際に、声優ですとか、YouTuberやニコニコ生主、あとはとにかくゲームが好きな人など、そういう人たちからも現在問い合わせをいただいています。

――何人ぐらいの採用を考えていますか?

平岩 具体的な人数は分かりませんが、とにかくクオリティの高い方々を揃えたいです。仕事のオファーも多くなってきて、僕だけでは手の回らない部分も増えてきましたから。

――あとは、イベントコンサルタント業務なども行うとお聞きしています。

平岩 イベント中継の制作も行っています。これは、制作会社と提携して行っている事業です。現在は“パワプロチャンピオンシップ”などを中継しています。元々スポーツ中継をやっている会社ですので、そういったノウハウや魅力の伝えかたはバッチリです。

――では、今後、平岩さんが目指している目標はありますか?

平岩 現在、対戦格闘ゲームの実況を練習しています。そもそもゲーム歴として、対戦格闘ゲームをあまりやってこなかったので、いろいろなことを勉強中です。やり込んだプレイヤーにしか分からないような細かい部分は、もちろん解説の方にお聞きしますが、どこが盛り上がるポイントなのかは把握しなくてはならないです。対戦格闘ゲームが実況できるようになれば、もっと仕事の幅を増やせそうだと思っていますね。

――対戦格闘ゲームですと、つねに実況しなくてはならないので大変そうですね。

平岩 対戦格闘ゲームは目まぐるしい展開が続きますが、試合展開以外の情報を伝える時間などもあるんですよ。たとえば選手の思いなどを取材で聞いていたとして、3ラウンド先取の試合の、最初のラウンドはすべてを細かく実況せずに、その情報を話すですとか、取捨選択が大事になりますね。これは、2ストライクまではほかの話をするように、野球の実況でもよくあることです。あ、あと……実況と全然関係ない目標を言ってもいいですか?

――もちろんです。

平岩 事務所を立ち上げたおかげで、いますごく忙しいです。ゲーム実況の練習も重ねていますし、プライベートでゲームを遊ぶ時間がなくて……。それを今後は確保したいですね!!

――お、落ち着いたら、思う存分遊びましょう!(笑)。

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編集部:工藤エイム、ミス・ユースケ、坂本ビス太 

ライター:西川君

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