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JeSU浜村氏「賞金スキームはグレーではない」ウメハラ氏らプレイヤーの疑問に答えた3時間

2018年2月18日、中野のRed Bull Gaming Sphere Tokyoにて、プロゲーマーウメハラの番組「DaigotheBeasTV」の公開放送が行われた。この公開放送には、一般社団法人日本eスポーツ連合(以下、JeSU)の浜村氏のほか、プロゲーマーのふ~ど氏、ネモ氏、プロesportsチーム DetonatioN Gaming CEOの梅崎氏、EVOJAPAN実行委員長のハメコ。氏など、格闘ゲーム業界ではおなじみのそうそうたるメンバーが出席。公開放送のお題は”ゲームと金”。「eスポーツの定義とは?」、「プロライセンスは必要か」、「eスポーツで日本は活性化できるのか?」の3つのテーマで熱い討論がくり広げられた。今回は「プロライセンスは必要か」についてとくに掘り下げていきたいと思う。

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プロゲーマー・座談会主催者「ウメハラ」氏
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プロゲーマー「ふ~ど」氏
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EVOJAPAN実行委員長「ハメコ。」氏
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ボタンマッシャーズ代表「がまの油」氏
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株式会社アリカ代表「西谷 亮」氏
nemo
プロゲーマー「ネモ」氏
raya
若手プレイヤー代表「らや」氏
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TOPANGA代表「にゃん師(豊田)」氏
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ウェルプレイド代表取締役「アカホシ(谷田)」氏
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対戦イベントFighter’s Crossover主催者「かげっち」氏
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DetonatioN Gaming CEO「梅崎伸幸」氏
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JeSU副会長・Gzブレイン代表取締役社長「浜村弘一」氏

本当にプロライセンスは必要?

第2部に話し合われたのは「プロライセンスは必要?」というこの座談会の本命とも言えるテーマ。出席者は肯定的な意見が多い中、視聴者は70%以上の人が否定し、現場と一般プレイヤーの温度差が顕著に表れる結果となった。

「そもそも賞金は必要なのか?」

がまの油氏は、「そもそも賞金が必要なのか?」という議論がなされていないと指摘。現在は大会で活躍するプレイヤーをスポンサーしたいというメーカーがたくさん出てきている状態で、賞金よりも大きいスポンサー額が動いているそうだ。それであれば、賞金を支払うよりも、その資金をプレイヤーの活躍を見せるために使いたいというイベント主催者ならではの視点で持論を展開した。

浜村氏によれば、プレイヤーにスポンサーがつくという点で言うと、プロライセンス発行大会となった闘会議にて、いままでesportsを知らなかった人たちも注目し始めており、「選手をスポンサーしたいというナショナルクライアント」や「実業団チームを持ちたい」という企業が出てきているという。プロライセンスには、活躍する選手を見つけやすくなるというメリットもあり、「若手の裾野を広げるという意味では、そういった企業に見つけてもらえるというのがとてもメリットになると思っている」とのこと。

続いて話題となったのが、「賞金スキームの合法性」。

賞金スキームの合法性を指摘している声もあり、「賞金はプロライセンスがなくても労務契約を結ぶことで渡せるのではないか?」という質問が浜村氏に向けられた。

浜村氏は、「プロへの報酬なら問題ない」という旨の記事が日経産業新聞に掲載された例をあげつつ、浜村氏自身が何度も消費者庁へ足を運び、「どうすれば賞金を提供ができるのか?」という話し合いを行ったそう。そこでは、

・取引付随性のない第三者が賞金を提供する
・プロライセンスを発行することで、大会主催者(IPホルダー)でもプロの高度なパフォーマンスに対して報酬を払うことができる

ということであれば問題ないと整理がついているそうだ。

ちなみにプロライセンスは、コンシューマーメーカーのCESA、オンラインゲームのJOGAなどの団体代表者30人以上、つまりコンプライアンスを守らなければならない一部上場企業の代表者が集まって作ったものであるという。また、2月7日の国会にて世耕弘成経済産業大臣が、「プロというものを民間の団体が始めようとしており、プロに対する報酬であれば問題ないということで消費者庁と整理がついている」という旨の発言を行ったそうだ。こういったことから浜村氏は「警察や関係省庁にも確認しているので、賞金スキームがグレーだとは思っていません」ときっぱり。

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これを機に出席者からつぎつぎに浜村氏への質問が飛び交っていた。下にまとめていこう。

「プロは副業にあたるものなのか?」

副業に当たるのかというのは所属企業の判断によるところが大きく、「所属団体と話してもらうしかない」と浜村氏。「会社に副業を指摘された場合はどうするのか?」という点については、事前に書面にて「副業について確認してください」と書面などで伝えることになっているので、個人に任せるしか方法はないとのこと。

「賞金スキームは労務契約ということなのでしょうか?」

浜村氏は「賞金である。報酬であるという立て付けでやっています」と回答。これが副業にあたるかは「確認が必要な会社と、そうではない会社があると思ったので、所属団体に確認してください」と返した。

「労務契約という形であれば、イベントで実況者が出演料をもらうのと同じだからライセンスがなくてももらえるのではないか?」

浜村氏によれば各ゲームメーカーは、コンプライアンスを守ろうとしている段階で、「たとえば10人しか集まらないような小さな大会に出場した一般人の方に、いきなり労務契約を結んで報酬を支払う」というやり方が、景品表示法にひっかからないとは思っていないそうだ。それもそのはずで”景品表示法というのは、一般人を釣ってしまうことが問題”という規制のため、それはあくまで法の抜け道でしかなく、メーカーとしてはそのリスクは避けたい。そこで「どこからがプロで、お金を払っていいパフォーマンスを見せる人なのか、そうじゃないのかの線引きをしないといけなかったんです。なので、ライセンスという形をしたほうが線引きをしやすいという考えなんです」と答えた。

「海外選手へのライセンス発行は?」「日本人の選手でライセンスを取れない人、賞金はいらないけど出たいという人はどうするのか?」

海外選手へのライセンスについては、今回対象にしているのは日本居住者に限っているが、ライセンスの発行にはIPホルダーが推薦する推薦制度があり、「海外から日本の大会に参加する選手は、ライセンス発行に値する選手として、IPホルダー(※)の推薦者として発行する」と考えているという。
※IPホルダー:ゲームタイトルの著作権(Intellectual Property)を保有する者(Holder)で、おもにゲームメーカーのことを指す。

また、ライセンスを取れない人の予選参加については「想定している」とのこと。プロアマ混合、プロ限定などの大会レギュレーションは大会主催者が作るもので、「(プロライセンスを取らないアマチュアだからという理由で)賞金を拒否してもかまわない」というレギュレーションであれば対応できるという。あくまでレギュレーションを作るのは大会主催者だが、最初の段階でJeSUが相談に乗り、そういった内容を確認することになっているそうだ。

一連のやりとりを終えると、当初はプロライセンスに反対意見を持っていたハメコ。氏も「ちゃんと説明していれば70%の反対はなかったと思う」。

賛成意見を表明していた西谷氏も、「(CESA会員向けの)説明会に出るまではネガティブな印象だったが、そのとき浜村さんの説明を聞いて、なるほどと納得した」と、JeSUの説明不足がもったいないという意見で合致。

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これを聞いた浜村氏は「説明ができなかったのは、申し訳ないと素直に謝ります」と謝罪。その理由は、8月のアジア競技大会(ジャカルタ)までに承認団体となるための実績作りを急いでしまったため、後手後手にまわってしまったとのこと。その反省から2月、3月は選手の方々、コミュニティーの質問に答えていきたいと話していた。

浜村氏への質問や要望はさらに続き、

「JeSUが認定していない大会に出た場合に何かしらの処罰があるのか?」

結論としてはまったく問題ないとのこと。これは「IPホルダーが承認しない賞金付きの大きな大会には出ないでほしい」というIPホルダーの声で、じつに例外的なパターンであるという。JeSUとしては、基本的に選手の活躍の場が増えてほしいと願っているそうだ。

「コミュニティーがメーカーの許諾を得る際に、使用許諾が取りやすいように働きかけてほしい」

「メーカー窓口がわからない場合は、JeSUにご連絡いただければ、できるだけ対応したい。大会が増える要望でしたらご協力したい」(浜村氏)。

「プロライセンスを取得しても、どんな大会が開催されるのかわからない」

タイトル認定の条件として、「今後しっかり大会を運用していく」というものがあるため、大会は予定されているのだが、大会の発表タイミングはメーカー次第だという。また、プロゲーマーに関することや実業団プロチームの問い合わせも増えており、JeSUとしては選手の活躍の場を作っていきたいということだ。

「PC系などもっといろんなゲームタイトルに広げていってほしい」

これについては、メーカーからesportsの競技にしたいという問い合わせが多く寄せられており、それはコンシューマーだけではなく、アーケードゲームや海外メーカーからも来ているという。さらには、esports向けのタイトルを作りたいというメーカーも増え、今後は競技性のあるタイトルが増えていくそうだ。

「今後はもっと多くのプレイヤーがプロライセンスをもらえる環境を提供してほしい」

プロライセンスの獲得方法はIPホルダーの推薦とJeSU公認の大会で優秀な成績を収めた方への発行のふたつがあり、「公認大会を開けるのはメーカーだけではないと思っている。コミュニティーなどからの要望があった場合、IPホルダーに確認したうえで承認するという可能性はある」と浜村氏。

ウメハラ氏はなぜライセンスをもらったか?

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プロライセンスに関する話題が一段落してきたところで、既存のプロゲーマーがなぜライセンスを受け取ることにしたのか?という話題に。

この話題についてウメハラ氏は「損得よりもどちらがワクワクするかで自分の進む道を選んできた」そうで、プロライセンスについても「正直、自分の立場ではどっちでもいいと思ったんです。(これまでのワクワクしてきた)楽しい感覚が損なわれるなら、むしろいらない」というのが第一印象だったと打ち明けた。一見否定的だが、「これから若い人にチャンスを与えようとするJeSUの役割を自分ができるわけではない」として、「こういう仕組みを作ってくれる人の邪魔をするのが嫌だった」からライセンスを受け取ったそうだ。

「邪魔をする人は、まっすぐ歩いている人の前に絶対行けないんですよ。僕はどこまでも先を歩きたいと思っているので、ライセンスの取得をボイコットして邪魔をするのは自分の信念に反する」(同)という言葉が印象的。

さらにこう続けた。「日本が活性化してウキウキワクワクするようなことができるなら、メッチャ協力したい。そんな楽しい仕事に関われることはないと思う」と続け、「アメリカや韓国がesports大国と言われているけど、日本のほうが本気出せば強いという気持ちがある。みんなで協力してesports大国として堂々と胸を張れるような活動ができるならと思って賛成した。ただし、そうではないならいらないと思う」とライセンスに対する思いを語った。

座談会を終えたウメハラ氏に直撃

風邪のせいで熱があってぼーっとしてしまうこともありましたが、とりあえず無事に終わってよかったというのが率直な感想です。浜村さんはいろんな質問を想定して、相当な準備をしてきたという印象です。初対面だったんですけど、やるときはやる人だと思ったし、マジメでエネルギーのある人だなと。プレイヤー側からはこれといった提案が少なかったですが、途中白熱する場面があったのはよかったと思います。

座談会取材を終えて

じつは、座談会を実施するにあたり、ウメハラ氏からキャスティングの相談を受けていました。最初に企画を聞かされたときは「そんな座談会やれるの?」という気持ちでしたが、実現して本当によかったと思いました。というのも、僕もプレイヤーのみなさんと同じで、JeSUの説明が不足していることに不満があったからです。しかし、今回の座談会を通じて、多くの疑問が解消され、かつ今後は選手との対話が約束されました。これまでのJeSUからすれば大きな進歩だと思いますし、プロゲーマー、ゲームファンの皆さんも安心したんじゃないでしょうか?(本来ならメディアの我々が実施すべきだったと思いますが、力不足ですみません!)

また、JeSUやプロライセンス以上に印象に残ったのが、ウメハラ氏の「邪魔する人は、まっすぐ歩く人の前に立てない」、「おもしろいことにはリスクがある」、「本気を出せば日本のほうが強い」という3つの言葉です。この中でも最後の「本気を出せば日本のほうが強い」という言葉はとくに共感していて、esportsにおいて海外ばかりが盛り上がっているように言われる状況は悔しくて仕方ありません。最近の僕は、闘会議のゲーム大会の企画運営など、メディアの枠を超えた仕事に携わることも増えてきました。そこでこのウメハラ氏の言葉を聞いて、「いつかメイドインジャパンで世界を超えたい」という気持ちが俄然強くなり、決して夢ではないんじゃないかと強く思いました。まずはメディアとしてesportsシーンを応援し、ゆくゆくはこういった熱量のある人たちと何か大きいことをやってみたいです。

編集部 豊泉宏幸

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